衛星で観測される大気の窓領域内の2波長における輝度温度TB1とTB2を用いて、大気の平均輝度温度の影響を除去して、地表面の輝度温度Tsを求める方法。
大気の窓領域における放射伝達方程式は
Lλ=Bλ(Ts)τ0(λ)+Bλ(TA)[1-τ0(λ)]
と表される。ここで、Bλ(T);プランクの関数、τ0(λ);波長λにおける地表面から衛星までの透過率、Ts;地表面の輝度温度、TA;大気の平均輝度温度である。非常に近い2波長λ1とλ2において輝度(輝度温度)が観測されると仮定すると、L1=B1(TB1)=B1(Ts)τ1+B1(TA)[1-τ1]
L2=B2(TB2)=B2(Ts)τ2+B2(TA)[1-τ2]
が同時に成り立つ。ここで、添字の1と2は波長を意味し、TB;輝度温度、τ;透過率である。更に、次の3点が期待される。
(1)2つのチャンネルの荷重関数は類似しているので、両式のTAは等しい(10.5〜12.5μmにおけるTAの変動は1K以内とされる。)。
(2)両式において、地表面の射出率およびTsは等しい。
(3)透過率の差は同一の吸収気体の吸収係数の差による(10.5〜12.5μm領域の主たる吸収気体は水蒸気である。)。
荷重関数は地表面で最大のピークを示すので、Ts、TB1、TB2はTAに近い。プランクの関数をTAの回りで展開すると、
Bλ(T)=Bλ(TA)+∂Bλ/∂T(T-TA)
となるので、
B1(T)=B1(TA)+∂B1/∂T(T-TA)
B2(T)=B2(TA)+∂B2/∂T(T-TA)
が成り立つ。両式から(T-TA)を消去して、
B2(T)=B2(TA)+{(∂B2/∂T)/(∂B1/∂T)}{B1(T)-B1(TA)}
が得られる。T=TB2がとT=Tsについて上式を適用すると、それぞれ、
B2(TB2)=B2(TA)+{(∂B2/∂T)/(∂B1/∂T)}{B1(TB2)-B1(TA)}
B2(Ts)=B2(TA)+{(∂B2/∂T)/(∂B1/∂T)}{B1(Ts)-B1(TA)}
とおける。波長2における放射伝達方程式
L2=B2(TB2)=B2(Ts)τ2+B2(TA)[1-τ2]
にこれらを代入して整理すると、
B1(TB2)=B1(Ts)τ2+B1(TA)[1-τ2]
が得られる。この式と、波長1における放射伝達方程式
L1=B1(TB1)=B1(Ts)τ1+B1(TA)[1-τ1]
からB1(TA)を消去すると、
B1(Ts)=B1(TB1)+{(1-τ1)/(τ1-τ2)}{B1(TB1)-B1(TB2)}
が得られる。プランクの関数B1(T)を
B1(T)=αT+β
と局所的に線形近似すると、上式は、
αTs+β=αTB1+β+{(1-τ1)/(τ1-τ2)}{(αTB1+β)-(αTB2+β)}
となるので、両辺からβを引き、更にαで除すと、
Ts=TB1+{(1-τ1)/(τ1-τ2)}(TB1-TB2)
が得られる。波長λにおける透過率τλは
τλ=exp(-βλU/μ)≒1-βλU/μ
と表現できる。ここで、βλ;吸収係数、U;可降水量、μ;衛星天頂角θの余弦の逆数である。従って、
(1-τ1)/(τ1-τ2)≒β1/(β2-β1)=const
となる。
例えば、NOAA衛星のAVHRRの第4バンド(11μm)