中川用語集
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ラウールの法則(Raoult's law)
飽和水蒸気圧は、水滴の表面の水分子の数に比例するので、溶質を含む溶液から成る水滴の表面上の飽和水蒸気圧e'は純水の水滴の表面上の飽和水蒸気圧eより小さくなり、両者の比fは、

f=e'/e=n0/(n+n0)

で与えられるという法則。ここで、n0;純水の分子数、n;溶質の有効分子数である。希釈されている溶質の場合は、n≪n0なので、

f=e'/e=1-n/n0

と近似表現される。
溶質の有効分子数nは、

n=iN0ms/Ms

と表される。ここで、N0;アボガドロ数(=6.02×1023)、ms;溶質の質量、Ms;溶質の分子量である。i;解離するイオン数であり、例えば、NaClや(NH4)2SO4の場合はi=2である。
一方、半径r液滴の体積Vは、

V=(4/3)πr3

だから、この水の質量mwは、

mw=Vρw=(4/3)πr3ρw

と表される。ここで、ρw;水の密度である。従って、水の分子数n0は、

n0=N0mw/Mw=(4/3)πr3ρwN0/Mw

と表される。ここで、Mw;水の分子量である。
これらをラウールの式に代入すると、

f=e'/e=1-n/n0=1-3imsMw/(4πρwMsr3)

が得られる。ここで、

b=3imsMw/(4πρwMs)

とおくと、上式は、

f=e'/e=1-b/r3


と表される。分子量Msの塩が半径rμmの水滴にmskg溶けている場合は、

f=e'/e=1-8.6×1015ms/(Msr3)

となる。飽和度e'/eは常に1より小さくて、水滴の半径が小さくなるに従って急速に低下する。

ラグランジュの方法(Lagrangian description)
流体の運動を記載したり測定したりする際に、オイラーの方法とラグランジュの方法の2種類の方法がある。オイラーの方法は、空間や地表面に固定された点における流れを記載したり測定したりする方法であり、ラグランジュの方法は、流体の特定の微小部分要素を追跡しながらその要素に作用する力とその効果を記載したり測定する方法である。流体力学の諸法則が必要とする物理量の時間変化率はラグランジュの方法により記載される量であるが、一般に気象学等の現場において取得される物理量の時間変化率はオイラーの方法により測定された量であるので、両者の対応関係を把握しておくことが極めて重要である。一般にラグランジュの方法により記載される物理量ψの時間変化率を実質変化とよびdψ/dtと表し、オイラーの方法により測定される物理量ψの時間変化率を局所変化とよび∂ψ/∂tと表すと、x、z、tの関数であるψを全微分することにより、両者には、

dψ/dt=udψ/dx+vdψ/dy+wdψ/dz+∂ψ/∂t

の関係があることが導かれる。この式を∂ψ/∂tについて解くと、

∂ψ/∂t=dψ/dt-udψ/dx-vdψ/dy-wdψ/dz

と表現される。この式は、固定点で観測れれる物理量の時間変化∂ψ/∂tは、実際に発生した物理量の時間変化dψ/dtと上流から移流の効果(移流項)-udψ/dx-vdψ/dy-wdψ/dzの和となることを表している。

ラジアン(radian)
平面角のSI補助単位で、記号radで表される。一つの円において、2本の半径が円周上で切り取る円弧の長さが半径に等しい時、その2本の半径の間の平面角を1ラジアンと定められている。
ラプラスの法則(Laplace's law)
球形の液滴の内圧(水圧)が液滴の表面張力と半径の影響で外圧(水蒸気圧)より大きくなる、と言う法則。液滴の半径をRとし、液滴の右半分の部分にかかる内圧(水圧)pinと外圧(水蒸気圧)pout表面張力σの関係を示したもの。表面張力は単位長さ当たりσの力で液滴の縁を左向きに引っ張るので、縁周の長さが2πRある液滴全体では2πRσの表面張力が左向きに働く。液滴の右側半球表面に垂直にかかっている外圧(水蒸気圧)poutの液滴左方向の合力はπR2poutである。これに対して液滴の右側半球表面に垂直にかかっている内圧(水圧)pinの液滴右方向の合力はπR2pinである。



左向きの合力と右向きの合力がつりあっているので、次式

πR2pout+2πRσ=πR2pin

が成り立つ。両辺をπR2で除した後に整理すると、次式

pin-pout=2σ/R

が得られる。この式は、フランスの物理学者・数学者Marquis Pierre deLaplace(1747-1827)により提唱されたので、ラプラスの法則として知られている。本法則により、液滴が球形を保つためには、外圧(水蒸気圧)poutよりも内圧(水圧)pinが大きい必要があり、その差は液滴の表面張力と液滴の半径に依存しており、液滴の半径が小さくなるほど差が大きくなることが明らかである。
本法則は、次のような方法でも、導ける。
半径Rの液滴の体積Vおよび表面積Aは、それぞれ、

V=(4/3)πR3

A=4πR2

と表せるから、液滴の半径がRからR+dRに変化すると、液滴の体積Vと表面積Aは、それぞれ、

dV=4πR2

dA=8πR

だけ変化する。液滴が液滴の表面と外部(蒸気)になした仕事は、

pindV=4πR2pin

と表される。この時、液滴の表面がなされた仕事は、

σdA=8πRσ

であり、外部の蒸気がされた仕事は、

poutdV=4πR2pout

と表される。液滴が表面張力によってなされる仕事を上回って外部(蒸気)になした仕事と蒸気がなされた仕事は等しいから、

4πR2pin=+8πRσ+4πR2pout

と表されねばならない。上式右辺第2項4πR2poutを移項した後に両辺を4πR2で除せば、

pin-pout=2σ/R

を得る。これは、ラプラスの法則そのものである。
ラプラスの法則の微分をとると、

dpin-dpout=2σd(1/R)

となる。等温等圧条件下で液滴の半径Rが変化するので、ギブスデュエムの関係

Vwdpin+Vvdpout=0

が成り立つので、

dpin=-(Vv/Vw)dpout

である。この関係をラプラスの法則の微分に代入すると、

-{(Vv-Vw)/Vw}dpout=2σd(1/R)

を得る。Vv≫Vw なので、

Vv-Vw≒Vv

と近似すると、

dpout=(Vw/Vv)2σd(1/R)

が得られる。液体の水の密度をρwとすると、

Vw=1/ρw

であり、水蒸気の状態方程式

poutVv=(Rd/ε)T

より、

1/Vv=εpout/(RT)

だから、

Vw/Vv=εpout/(ρwRT)

である。従って、

dpout/pout=dln(pout)=2εσ/(ρwRdT)d(1/R)

が得られる。この式を、R=rからR=∞まで積分すると、

ln(pout r/pout )=2εσ/(rρwRdT)

となる。これを指数表示すれば、

pout r=pout e2εσ/(ρwRdrT)

が得られる。これはケルビンの式そのものである。

ランベルト等角円錐図法(Lambert conformal conic projection)
polar secant conical gnomonic projection(正軸割円錐心射図法)では等角画像が得られないので、等角になるように緯度間隔を補正した非投射図法。
北緯φ、東経λの地球表面上の点を、地球と2つの緯度φ1とφ2で交わる地軸と軸が共通の円錐の表面に緯度φ0、経度λ0を中心として投影する図法。2つの緯度円は標準平行線と呼ばれる。ランベルト等角円錐図法によって球面から平面に変換された北緯φ、東経λの地点の座標xとyは

x=ρsin[n(λ-λ0)]

y=ρ0-ρcos[n(λ-λ0)]

で与えられる。ここで、nとFおよびρ0は、

n=ln(cosφ1secφ2)/{ln[tan(π/4+φ2/2)cot(π/4+φ1/2)]}

F=cosφ1tann(π/4+φ1/2)

ρ0=Fcotn(π/4+φ0/2)

で与えられる定数であり、ρは、

ρ=Fcotn(π/4+φ/2)

で与えられる変数である。
ランベルト等角円錐図法では、経線は北極から放射状に直線的に伸び、緯線は北極点を中心とする同心円の一部からなり互いに平行であるが、等角画像にするため標準の緯線φ2或いはφ1からの距離が増すほど緯線間の距離が増すように設定される。気象学の分野では、地上天気図を表現するのにランベルト等角円錐図法が最適な図法とされ、わが国のような中緯度の天気図では基準緯度として北緯60°と30°が用いられる。

             (http://www.jma.go.jp/jp/g3/images/observe/05103109.pngより)


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