前面の両側で地衡風が吹いている地衡風前面の傾斜αを与える式。前線に沿ってy軸を置き、正のx領域を気温T1、密度ρ1の寒気、負のx領域を気温T2、密度ρ2暖気が覆っているとする。前面の両側の気圧は等しいので前面に沿った気圧の全微分も等しく、
dp=(∂p/∂x)1dx+(∂p/∂y)1dy+(∂p/∂z)1dz=(∂p/∂x)2dx+(∂p/∂y)2dy+(∂p/∂z)2dz
が成り立つ。これを変形すると、前面(y軸)に沿っては、(∂p/∂y)1=(∂p/∂y)2なので、
tanα=dz/dx=-{(∂p/∂x)1-(∂p/∂x)2}/{(∂p/∂z)1-(∂p/∂z)2}
を得る。状態方程式より、
(∂p/∂z)1=-ρ1g、 (∂p/∂z)2=-ρ2g
地衡風の式より、
(∂p/∂x)1=-fρ1u1、 (∂p/∂x)2=-fρ2u2
なので、上式は、
tanα=-f(ρ1u1-ρ2u2)/{g(ρ1-ρ2)}
となる。この式はマルグレスの式と呼ばれている。再度状態方程式を代入して密度を消去すると、マルグレスの式は、
tanα=f(T2u1-T1u2)/{g(T2-T1)}
とも表現できる。マルグレスの式から、前面は温度差が無いと存在せず、傾斜した前面が存在できるのは回転場の中にある(コリオリの力が作用する)からであることが理解できる。もし回転場の中になければ、低温な流体が下、高温な流体が上になって水平な境界面が形成されることが分かる。