光学的厚さ (optical
thickness)
気層や雲層の一端から入射した強度I0の放射強度または放射フラックス密度が、気層や雲層全層を通過した後に強度Iの放射強度または放射フラックス密度として観測される時、
I=I0e-τ
の関係を満たすτを光学的厚さと呼ぶ。光学的深さと同義だが、光学的深さが層上限から下方に測定されるのに対して、光学的厚さは層下限から上方に測定される。光学的厚さτは、放射に対する気層や雲層の不透明さの程度を示す尺度であり、e-τは当該の気層や雲層の透過率を意味する。両辺対数をとれば、光学的厚さτの定義式として、
τ=-ln(I/I0)
が得られる。光学的厚さτは、放射の吸収が貢献する成分と散乱が貢献する成分の合計からなるので、これらを区別する必要がある場合には、それぞれ、吸収光学的厚さ、散乱光学的厚さ、合計光学的厚さと呼ばれるが、多くの場合、単に光学的厚さと呼ばれる。
光学的厚さは、波長ごとに対しても、全波長に対しても定めることができる。地球大気層は、第一近似としては、短波放射フラックス密度に対しては透明であり、長波放射フラックス密度に対しては半透明で透過率は約5%として扱えるので、短波放射波長域における地球大気層の光学的厚さはτ≒0で短波放射波長域における光学的厚さはτ≒3と近似される。
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光学的深さ (optical depth)
気層や雲層の一端から入射した強度I0の放射強度または放射フラックス密度が、気層や雲層内を一定距離通過した後に強度Iの放射強度または放射フラックス密度として観測される時、
I=I0e-τ
の関係を満たすτを光学的深さと呼ぶ。光学的厚さと同義だが、光学的厚さが層下限から上方に測定されるのに対して、光学的深さは層上限から下方に測定される。光学的深さτは、放射に対する気層や雲層の不透明さの程度を示す尺度であり、e-τは当該の気層や雲層の透過率を意味する。両辺対数をとれば、光学的深さτの定義式として、
τ=-ln(I/I0)
が得られる。光学的深さτは、放射の吸収が貢献する成分と散乱が貢献する成分の合計からなるので、これらを区別する必要がある場合には、それぞれ、吸収光学的深さ、散乱光学的深さ、合計光学的深さと呼ばれるが、多くの場合、単に光学的深さと呼ばれる。 |
恒星時間 (sidereal time)
恒星が南中してから次に南中するまでを1日(24時間)として定める時間。恒星南中時を正午とする。恒星時間の24時間を1恒星日と言う。1恒星日の間に地球は地軸の回りを正確に360°回転する。1恒星日を太陽時間で表すと23時間56分04秒である。このため恒星の日周運動は太陽の日周運動より1日に約4分づつ早くなる。 |
高積雲(altocumulus)
団塊状の中層雲。腕を一杯に伸ばして小指1本の幅〜指4本の幅の大きさ(視野角1°以上、5°未満)。 |
高層雲(altostratus)
層状の中層雲。背後に太陽がある場合、太陽のある方向は分かるが、太陽の光球の形は分からない。 |
国際単位系(international system of units)
1960年の第11回国際度量衡総会(CGPM)が、それ以前の議論を踏まえて提唱した単位系で、いかなる言語においてもSIと言う省略記号で表わし、省略符(.)は用いないと定められている。国際単位系とSIは同義であるが、しばしばSI単位系と呼ばれる。学術書では国際単位系が広く普及しているだけでなく、わが国では、平成4年(1992年)に計量法の改正が行われ、平成11年10月1日から取引又は証明に用いる単位には国際単位系を用いることが義務付けられている。
SI単位系は、SI単位とSI接頭語から構成されている。SI単位には、基本単位、誘導単位、補助単位の3種類があって、個々の物理量に対しては唯一のSI単位しか存在せず、すべてのSI単位は一つの首尾一貫した系に属している。
SI基本単位の名称と記号は以下の通り。
物 理 量 |
SI単位の名称 |
SI単位の記号 |
長 さ |
メートル(metre) |
m |
質 量 |
キログラム(kilogramme) |
kg |
時 間 |
秒(second) |
s |
電 流 |
アンペア(ampere) |
A |
熱力学的温度 |
ケルビン(kelvin) |
K |
物質の量 |
モル(mole) |
mol |
光 度 |
カンデラ(candela) |
cd |
SI誘導単位は、SI基本単位かの積または商から首尾一貫して導かれる単位である。ある種のSI誘導単位には以下に示すような特別の名称と記号が与えられている。
物 理 量 |
SI単位の名称 |
SI単位の記号 |
SI単位の定義 |
周 波 数 |
ヘルツ(hertz) |
Hz |
s-1 |
エネルギー |
ジュール(joule) |
J |
kg m2s-2 |
力 |
ニュートン(newton) |
N |
kg m s-2 = J m-1 |
仕 事 率 |
ワット(watt) |
W |
kg m2s-3 = J s-1 |
圧 力 |
パスカル(pascal) |
Pa |
kg m-1s-2 = N m-2 =
J m-3 |
電 荷 |
クーロン(coulomb) |
C |
A s |
電 位 差 |
ボルト(volt) |
V |
kg m2s-3A-1 = J
A-1s-1 |
電気抵抗 |
オーム(ohm) |
Ω |
kg m2s-3A-2 = V
A-1 = S-1 |
コンダクタンス |
ジーメンス(siemens) |
S |
kg-1m-2s3A2
= Ω-1 |
電気容量 |
ファラッド(farad) |
F |
A2s4kg-1m-2
= A s V-1 |
磁 束 |
ウェーバー(weber) |
Wb |
kg m2s-2A-1 = V
s |
インダクタンス |
ヘンリー(henry) |
H |
kg m2s-2A-2 = V
A-1s |
磁束密度 |
テスラ(tesla) |
T |
kg s-2A-1 =
V s m-2 |
特別の単位記号は与えられていないがよく知られている誘導単位の例を以下に示す。
物 理 量 |
SI単位の名称 |
SI単位の記号 |
波 数 |
メートル分の1 |
m-1 |
面 積 |
平方メートル |
m2 |
体 積 |
立法メートル |
m3 |
速 度 |
メートル毎秒 |
m s-1 |
加 速 度 |
メートル毎秒の二乗 |
m s-2 |
密 度 |
キログラム毎立法メートル |
kg m2-3 |
表面張力 |
パスカル・メートル |
Pa m = N m-1 = kg s-2 |
電気伝導率 |
ジーメンス毎メートル |
S m-1 = kg-1m-3s3A2 |
熱伝導率 |
ワット毎メートル・ケルビン |
W m-1K-1 = kg m
s-3K-1 |
熱 容 量
エントロピー |
ジュール毎ケルビン |
J K-1 = kg m2s-2K-1 |
比熱容量
比エントロピー |
ジュール毎キログラム・ケルビン |
J kg-1K-1 = m2s-2K-1 |
モル熱容量
モルエントロピー
気体定数 |
ジュール毎ケルビン・モル |
J kg-1mol-1 = kg m2s-2K-1mol-1 |
拡散係数
運動粘性率 |
平方メートル毎秒 |
m2s-1 |
SI単位系は角度を基本単位とするか誘導単位とするか決定せずにSI補助単位としている。角度そのもの、およびそれを用いた誘導単位はすべて補助単位と位置づけられる。以下に例を示す。
物 理 量 |
SI単位の名称 |
SI単位の記号 |
平面角 |
ラジアン(radian) |
rad |
立体角 |
ステラジアン(steradian) |
sr |
角速度 |
ラジアン毎秒 |
rad s-1 |
角運動量 |
ジュール・秒毎ラジアン |
J s rad-1 = m2kg
s-1rad-1 |
放射強度 |
ワット毎ステラジアン |
W sr-1 |
SI接頭語とその記号には次のようなものが定められている。
大きさ |
SI接頭語 |
記号 |
10-18 |
アット(atto) |
a |
10-15 |
フェムト(femto) |
f |
10-12 |
ピコ(pico) |
p |
10-9 |
ナノ(nano) |
n |
10-6 |
マイクロ(micro) |
μ |
10-3 |
ミリ(mlli) |
m |
10-2 |
センチ(centi) |
c |
10-1 |
デシ(deci) |
d |
10 |
デカ(deca) |
da |
102 |
ヘクト(hecto) |
h |
103 |
キロ(kilo) |
k |
106 |
メガ(mega) |
M |
109 |
ギガ(giga) |
G |
1012 |
テラ(tera) |
T |
SI接頭語を使用するに当って、以下のようなことに注意する必要がある。
(1)キログラムがSI基本単位でありグラムは基本単位ではないが、10-6kgや103kgを表す際には、それぞれ、μkgやkkgではなくて、mgとMgが正しい。
(2)SI接頭語を付けることができるのはSI基本単位(長さの場合はkgではなくg)と特別に名称と記号が与えられている一部の誘導単位に対してだけである。
(3)複合接頭語は用いてはならない。例えば、10-9mを表す場合、mμmではなくnmを用いる。
(4)接頭語が付いた単位の記号は一つの記号と見なされるので、()を用いずに累乗を表す。例えば、cm2は常に(0.01m)2を意味し、決して0.01m2を意味するものではない。また、Mg
km2s-2は103kg (103m)2(10-6s)-2を意味するので、1021kg
m2s-2である。
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誤差(error)
ある量の測定値のその量の真値からの差。測定値が真値より大きい時を正の誤差という。
誤差は、その性質によって、系統誤差と偶発誤差に大別される。系統誤差は、ある定まった規則的な関係で導入される誤差で、その起因により、さらに、理論誤差、機械誤差、個人誤差に細分される。系統誤差は、その原因が分かれば、予めこれを避けるとか、後で補正することによって、除去できる可能性がある。これに対して、偶発誤差は、全く偶然に不定な関係で発生する誤差で、過失誤差、必然的偶発誤差に細分される。過失誤差は、注意することによって除去できる可能性があるが、いかに注意しても人為によっては絶対に避けることができない誤差が必然的偶発誤差である。通常、誤差と言う場合には、この必然的偶発誤差を指している場合が多い。
ある量の測定値のその量の最確値からの差を残差といい、測定値が最確値より大きい時を正の残差という。ある量の最確値は知りうるが、真値は知りえないので、残差は直接知るうるが、誤差は知り得ない。そこで、平均の誤差の値を残差から求める工夫がなされている。
測定値i=誤差i+真値=残差i+最確値
だから、
誤差i=残差i+最確値-真値
と置ける。この式の両辺を自乗すると、
誤差i2=残差i2+2×残差i×(最確値-真値)+(最確値-真値)2
となる。n個の積算を求めると、
伯差i2=博c差i2+n(最確値-真値)2
となる。二乗平均誤差をσと表すと、
伯差i2=nσ2
と表現でき、さらに、
(最確値―真値)2=(肺i/n―真値)2=((xi―真値)/n)2=(伯差i)2/n2
≒伯差i2/n2=nσ2/n2=σ2/n
なので、上記の式は、
nσ2=博c差i2+σ2
と表現できる。従って、二乗平均誤差σは残差を用いて、
σ2=博c差i2/(n-1)
と表現される。
この二乗平均誤差σは1回の測定値の誤差であり、N回の測定値を平均して求まる最確値の二乗平均誤差σは、測定回数nの平方根の逆数倍になり、
σ2=博c差i2/{n(n-1)}
と表現される。
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誤差伝播の法則(law of propagation of errors)
測定目的量yを直接測定しないで、目的量yと関係のある数種の量ziを測定し、その測定値ziに基づいて目的量yを算出する間接測定の際には、実際に測定する数種の量の測定値ziそれぞれに伴なう誤差σiが原因となって、目的量の算出値にも誤差σyが発生する。これらの量の間には、
σy2=(∂y/∂zi)2σi2
の関係がなりたつ。このことを、誤差伝播の法則とよぶ。σが平均誤差でも確率誤差でも同様の法則が成り立つ。 |
コリオリの力(Coriolis force)
地表面とは異なる速度で地球−大気系内を移動する物体が受けるみかけの力をコリオリの力と呼び、
-2Ω×v
と表される。ここで、Ω;地球の回転ベクトル、v;風ベクトルである。みかけの力は、回転する地表面に固定された局所直交座標系を用いて、物体の位置、速度、加速度の測定を行なうと生じる。地表面と一緒に地軸の回りを回転している物体が受けるみかけの力は、遠心力と呼ばれるので、コリオリの力は、地表面とは異なる速度で地球−大気系内を移動する物体が受けるみかけの力から地表面と一緒に地軸の回りを回転している物体が受けるみかけの力(遠心力)を取り除いた成分、ということが出来る。
緯度φの地点における地球の回転ベクトルΩと風ベクトルvの局所直交座標系成分表示は、
Ω=(0, Ωcosφ, Ωsinφ)
v=(u, v, w)
なので、コリオリの力-2Ω×vの成分表示は、
-2Ω×v=(2vΩsinφ-2wΩcosφ)i-2uΩsinφj+2uΩcosφk
となる。即ち、コリオリの力のx成分は、
2vΩsinφ-2wΩcosφ、
y成分は、
-2uΩsinφ、
z成分は、
2uΩcosφ
となる。このことは、北半球では(φ>0の場合)、地球上を西から東へ移動する物体(u>0)には、南方向へ2uΩsinφ、上方向へ2uΩcosφの見かけの力が働き、南から北へ移動する物体(v>0)には、東方向へ2vΩsinφの見かけの力が働き、下から上へ移動する(w>0)には東方向へ2wΩcosφの見かけの力が働くことを意味している。
しかしながら、気象学では、空気の大規模な運動に対して大気は静力学的平衡(静水圧平衡)状態にあると仮定し、地球の回転ベクトルΩのy成分を無視し、
Ω=(0, 0, Ωsinφ)
とする。従って、気象学で用いるコリオリの力-2Ω×vの成分表示は、
-2Ω×v=2vΩsinφi-2uΩsinφj=(
2vΩsinφ, -2uΩsinφ, 0 )
である。ここで、
f=2Ωsinφ
と置き、これをコリオリのパラメータと呼ぶ。従って、コリオリの力は、一般に、
-2Ω×v=( fv, -fu, 0 )
と表記される。気象学が扱うコリオリの力は、鉛直方向の風速に対しては作用せず、水平風のみに作用する。気象学が扱うコリオリの力は、北半球では、進行方向右90°の方向に作用し、大きさは速度に比例する。
コリオリの力の大きさは比較的小さいが、高度3000m以上の自由大気において空気塊に対して水平方向に有効に作用する力は、コリオリの力と気圧傾度力の2力しか存在しないので、コリオリの力が自由大気の水平方向の運動状態に決定的な影響力を持つ。 |
コリオリ(の)パラメータ(Coriolis
parameter)
静水圧平衡状態に於けるコリオリの力と水平風速は比例関係にあるが、その比例関係を表す比例定数をコリオリ(の)パラメータと呼び、通常、fと表記する。即ち、
f=2Ωsinφ
である。ここで、Ω;地球の回転角速度(7.292×10-5rad/s)、φ;緯度である。即ち、コリオリ(の)パラメータfは、地球の回転ベクトルの鉛直成分の2倍に相当する。地球の回転ベクトルの鉛直成分は、鉛直軸の回りの地表面の回転速度の2倍の大きさであるので、コリオリのパラメータは、地表面が、宇宙空間に対して持っている鉛直渦度という解釈が可能である。このため、コリオリのパラメータは惑星渦度とか地球渦度と呼ばれることがある。 |
混合距離(mixing length)
乱流混合が起こる際の乱渦の上下方向の大きさ。通常ℓと表記され、高度に比例すると見なされており、
ℓ=kz
と表現される。比例定数kは、カルマン定数と呼ばれ、平均0.4とされている。 |
混合層(mixing layer)
対流混合層(convective mixed
layer),対流境界層( convective boundary
layer)と呼ばれることもある、乱流によりよく混合され、温位や運動量、風速が一様になったタイプの大気境界層。水分はそれほどよく混合されておらず高度とともに若干減衰している場合が多い。強い乱流混合は、強いシアーを伴った強い風により引き起こされる機械的擾乱(強制対流)または大きな熱胞により引き起こされる浮力擾乱(自由対流)に起因する。浮力により形成される混合層は、通常、不安定であり、日射による大気境界層の下端の加熱や、混合層上端の雲や霧の層の上限の放射冷却により引き起こされる。 |
混合比(mixing ratio)
単位質量の乾燥空気と何kgの水蒸気が混在しているかを表す変数で、xと表記される場合が多い。混合比xの定義式は、
x=εe/(p-e)
で与えられる。ここで、e;水蒸気圧、p;気圧、ε;密度比(=0.622)である。上式にεの具体的な値を代入すると、
x=0.622e/(p-e)
となり、無次元量であるが、気象学では、通常、この値を1000倍して、
x=622e/(p-e)
と表記し、単位としてg/kgを用いる習慣がある。
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コンマ雲(comma cloud)
リーフ雲から発展して形成される、雲の回転による明瞭なコンマ形の形状を持つ単独の雲ないしは雲システム。通常、発達中の大規模な中緯度低気圧に伴っており、中緯度低気圧よりスケールの小さな循環パターンの中には存在しない。
ジェット気流がコンマ雲を横切り始める部分に編曲点が存在し、それより北側のコンマヘッドの後縁は高気圧性の曲率を持ち、南側のコンマテールの後縁は低気圧性の曲率を持つので、コンマ雲の後縁は明瞭なS字形状をなす。コンマヘッドの高気圧性の曲率を持つ後縁部分は雲のバルジと呼ばれる。コンマ雲の前縁は、上層の風が雲を押し広げるので後縁に比べると不明瞭になる。ジェット気流がコンマ雲を横切り始める部分はサージ領域と呼ばれ、ドライスロットの先頭が存在する。サージ領域から、通常、寒冷前線に平行して、南方にコンマテールが伸びる。編曲点から東方に温暖前線が延びるが、衛星画像上で温暖前線を見ることは困難である。 |
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