中川用語集
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回帰直線  回転楕円体  海面更正  ガウスの誤差関数 化学ポテンシャル  角運動量  拡散方程式  核分裂 核融合  核力  確率誤差  可降水量   風の対数法則  加速度  仮温度 慣性  慣性系 慣性振動 慣性モーメント 慣性力 乾球温度 乾球温度計 乾湿(球温度)計 乾湿計定数 乾湿差 間接測定 乾燥空気 乾燥断熱減率 貫入性対流 寒冷低気圧

回帰直線 (regression line)
英国のGalton, F. (1886)は、親と子供の身長の関係を散布図上にプロットし、親全体と子供全体の平均身長は等しく、親の身長の全体平均からの偏差と子供の身長の全体平均からの偏差は比例関係にあり、比例定数は2/3となることを示した。このことは、集団としての平均身長は1世代間では変化せず、身長が平均から離れている親からは身長が親と同じ方向に離れている子供が生まれるが、子供の身長は全体の平均値に近づいていることを意味しており、Galton, F. (1886)は、この現象を平均への回帰(regression to the mean)と呼び、その対応関係を示す直線を回帰直線(regression line)と呼んだ。


 (http://www.econ.uiuc.edu/~roger/research/galton/galton.pdfより)

元来は、生物の親と子供の間での属性の対応関係を示す直線、しかもその傾きが1より小さいことに大きな意味を持たせている概念であったが、現在では本来のGalton, F. (1886)の提唱とは無関係に、2変数x,y間の対応関係を示す直線

y=ax+b

を回帰直線、係数aを回帰係数と呼んでいる。一連のN組の測定値

 
x1,y1
 x2,y2
  x3,y3
  ……
  xi,yi
  ……
  xN,yN

に最適な直線(回帰直線) y=ax+b の係数(回帰係数) a と b を統計学的決定するためには、通常、最小自乗法が用いられる。

y1-(ax1+b)=δ1
   y2-(ax2+b)=δ2
   y3-(ax3+b)=δ3
   ……
   yi-(axi+b)=δi
   ……
   yN-(axN+b)=δN

と表現すると、

買ツi2=(yi-axi-b)2

と表現できる。δiを残差、δi2を残差の自乗、買ツi2を残差の自乗和という。 係数 a と b をでたらめに決めれば、残差の自乗和買ツi2はいくらでも大きくなり最大値は存在しない。係数 a と b を適切に決めれば、残差の自乗和買ツi2を最小にできる。もし、すべてのデータが直線にのれば、残差の自乗和買ツi2を0にすることが可能となる。最適な係数 a と b を決定することは、

/∂a(yi-axi-b)2=0

/∂b(yi-axi-b)2=0

を同時に満足するa と b を決定することと同値である。上2式の偏微分を実行すると、

-2(yi-axi-b)xi=0

-2(yi-axi-b)=0

更に整理すると、

a肺i2+b肺i=肺iyi

a肺i+b1=輩i

となる。これは、a と b に関する2元1次連立方程式なので、これを解いて、

a=(N肺iyi-肺ii)/{N肺i2-(肺i)2}

b=(肺i2i-肺iiyi)/{N肺i2-(肺i)2}

が得られる。これが、係数 a と b の最確値である。この係数 a と b の最確値を用いて個々のxiからyiを推定し、残差の自乗和買ツi2を求めると、

買ツi2=輩i2-2b輩i+Nb2+ a肺i2+2ab肺i-2a肺iyi

となる。勿論、残差の自乗和買ツi2は、実際に、買ツi2=(yi-axi-b)2を計算してもよい。

係数 a と b の二乗平均誤差 σaとσbは、

σa2=N/(N肺i2-(肺i)2)×買ツi2/(N-2)

σb2=肺i2/(N肺i2-(肺i)2)×買ツi2/(N-2)

となる。確立誤差raとrbは、それぞれ、σaとσbを0.6745倍すれば、求められる。
y と x の平均値、y=(輩i)/N と x=(肺i)/N は、得られた回帰直線

y=ax+b

を満足し、

y=ax+b

は必ず成り立つ。平均は必ず再現されるので、平均の回りの分散 (yi-y)2 が再現できる回帰直線ほどモデルとして優れている。回帰直線による推定値の平均は ax+b なので、回帰直線による推定値axi+bの平均値の回りの分散は (axi+b-ax-b)2=a2(xi-x)2と表現される。推定値の分散とデータの分散の比a2(xi-x)2/(yi-y)2は、決定係数あるいは寄与率とよばれる。回帰係数 a=(N肺iyi-肺ii)/{N肺i2-(肺i)2} を利用すると、

a2(xi-x)2/(yi-y)2= a2{N肺i2-(肺i)2})/{N輩i2-(輩i)2}
   =(N肺iyi-肺ii)2/{N肺i2-(肺i)2}2{N肺i2-(肺i)2})/{N輩i2-(輩i)2}
       =(N肺iyi-肺ii)2/{N肺i2-(肺i)2}/{N輩i2-(輩i)2}=r2

となり、推定値の分散とデータの分散の比は、相関係数r=(N肺iyi-肺ii)/{N肺i2-(肺i)2}0.5/{N輩i2-(輩i)2}0.5 の自乗に等しい。即ち、相関係数の自乗r2は、生のデータのもつ平均値の回りの分散のうち回帰直線による推定値によって説明できる比率を意味している。即ち、回帰直線の説明度を示す際には、相関係数rよりも相関係数の自乗r2の方が適している。 また、回帰直線の係数 a と相関係数 r の間には、

a=(σyx)r

が常に成り立つ。

回転楕円体 (spheroid)
一般の楕円体ellipsoidは

x2/a2+y2/b2+z2/c2=1

を満足する点(x,y,z)により表面が形成される3次元の図形であり、が、原点を通るxy断面、xz断面、yz断面はいずれも楕円になり、3軸方向の半径は不等である。
楕円を短軸の周りに回転させると楕円体が形成されるが、この場合は、回転軸に直交する2軸方向の半径は等しくなり、

(x2+y2)/a2+z2/c2=1

と表現される。この場合の楕円体を回転楕円体
spheroidと呼ぶ。a>cの回転楕円体を扁平回転楕円体、a<cの回転楕円体を長円回転楕円体と呼び、区別する。回転軸を地軸に一致させ、短軸半径と長軸半径を地球の短半径と長半径に一致させた扁平回転楕円体を地球楕円体と呼ぶ。
a=b=cの場合、楕円体の方程式は、

x2+y2+z2=a2

となり、半径aの球の方程式となる。
海面更正 (reduction to mean sea level)
気圧は測定高度により異なるので、異なる地点の気圧を比較するためには、同一の高度の気圧値に換算して行う必要がある。通常、基準の高度として平均海面高度を用い、現地気圧を気圧測定地点の直下に想定される平均海面上における気圧値に換算する作業を、気圧の海面更正と呼び、換算された気圧の値を海面更正気圧と呼ぶ。また、海面更正気圧と現地気圧の差を海面更正値と呼ぶ。
気温減率Γの多方大気の気圧分布式(測高公式)

p=p0(1-0.0065z/T0)g/(RΓ)

をp0について解き、さらに、

T0=T+0.0065z

を代入すると、

p0=p{1-0.0065z/(T+0.0065z)}-5.257

を得る。本式により、高度zで気圧p、気温Tが測定された時の海面更正気圧p0を求める。厳密には水蒸気が存在する効果を考慮して、実際の気温Tの変わりに仮温度Tvを用いる。
例えば、1951〜1980年の長野地方気象台の1月の平均気圧は965.4hPa、平均気温は-1.2℃である。長野気象台の気圧計は高度419.3mに設置されているから、これらの数値から上式により海面更正気圧p0を求めると、

p0=965.4{1-0.0065×419.3/(-1.2+273.15+0.0065×419.3)}-5.257=1017.34 hPa

となる。これは、気象庁が毎日3時間ごとに8回求めた海面更正気圧の日平均値を1ヶ月平均して更に30年分平均して求めた海面更正気圧の平年値1017.3hPaと極めて近い。
このように、標高が419.3mの地点で観測された気圧に対する海面更正値は51.9hPaにも及ぶ。海面更正の結果の値が他の観測地点と比べて数hPa大きいとか小さいとかが天気図の上で議論されるので、海面更正気圧に誤差があれば議論の結果が逆になる可能性がある。このため、標高が高い観測所の気圧データは天気図には用いない(例えば、富士山測候所、筑波山測候所、軽井沢測候所など)。
従って、地上天気図において、チベット高原や南極大陸、グリーンランド等に等圧線が描画されているような場合には、その気圧の分布の扱いには注意が必要。

ガウスの誤差関数 (Gaussian error function)

変数xがaより大きくない確率P{x≦a}をaの関数として表現した関数

F(a)=P{x≦a}

を確率分布関数といい、確率分布関数が微分可能で導関数

F'(x)=f(x)

が存在するとき、f(x)を確率密度関数という。確率密度関数が存在すれば、
                                b
P{a<x≦b}=F(b)-F(a)=∫f(x)dx
                                a
が成り立つ。
変数xが誤差の大きさを表すとき、この確率密度関数は誤差関数と呼ばれる。誤差関数が正分布関数であるとき、この関数をガウスの誤差関数と呼ぶ。即ち、大きさxの誤差が発生する確率を表すガウスの誤差関数は

f(x)=1/{(2π)0.5σ}exp{-x2/(2σ2)}

と表される。ここで、π;円周率、σ;誤差の標準偏差である。誤差がガウスの誤差関数に従う場合、誤差の平均値は0、二乗平均誤差はσになる。

化学ポテンシャル (chemical potential)

ギブスの自由エネルギーG

G=U+PV-TS=H-TS

の等温等圧条件下でのモル数n依存性を化学ポテンシャルと呼び、μと表記する。即ち、

μ=(∂G/∂n)

である。ここで、U;内部エネルギー、P;圧力、V;体積、T;温度、S;エントロピー、H;エンタルピーである。化学ポテンシャルμは1モル当りのギブスの自由エネルギーを意味しており、通常は系を構成する成分ごとに分けて考える。従って、モル数niの系の第i成分の化学ポテンシャルμiは、

μi=(∂G/∂ni)T,P,nj

であり、各成分の化学ポテンシャルの総和は系全体のギブスの自由エネルギーに等しく、

G=買ハini

である。

角運動量(angular momentum)
運動量モーメントのこと。
拡散方程式 (diffusion equation)

∂ψ/∂t=κ∇2ψ

の形の偏微分方程式を拡散方程式と呼ぶ。ここで、ψ;物理量、t;時間(s)、κ;拡散係数(m2s-1)である。物理量の勾配の空間変化率に比例して物理量は時間変化することを意味している。
x方向1次元の場合、拡散方程式は

∂ψ/∂t=κ∂2ψ/∂x2

と表される。解をψ=ψ(x,t)=X(x)ψ(t)と仮定して、上式を変数分離すると、

X(x)∂ψ(t)/∂t=κψ(t)∂2X(x)/∂x2

両辺をκX(x)ψ(t)で除すと

{1/κψ(t)}∂ψ(t)/∂t={1/X(x)}∂2X(x)/∂x2

両辺の値は一定値になり、分離定数separation constantと呼ばれる。分離定数の与え方によって、異なる一般解が得られる。
分離定数を-1/λ2と仮定すると、左辺から

〔1/{κψ(t)}〕∂ψ(t)/∂t=-1/λ2

両辺にκを掛けると

∂ψ(t)/ψ(t)=-(κ/λ2)∂t

左辺は対数関数の微分なので

∂ln{ψ(t)}=-(κ/λ2)∂t

時間tに関して積分すると、基本解

ψ(t)=Aexp{(-(κ/λ2)t}

が得られる。変数分離した拡散方程式の右辺から

{1/X(x)}∂2X(x)/∂x2=-1/λ2

両辺にX(x)を掛けた後に右辺を左辺に移項すると、

2X(x)/∂x2+(1/λ2)X(x)=0

となる。これは定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2+(1/λ2)=0

の解は、

D=±i/λ

なので、基本解は

X(x)=Bcos(x/λ)+Csin(x/λ)

従って、拡散方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=A{Bcos(x/λ)+Csin(x/λ)}exp{(-(κ/λ2)t}+ψ

となる。ABをA、ACをBと置き直すと、拡散方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=Acos(x/λ)+Bsin(x/λ)}exp{(-(κ/λ2)t}+ψ

となる。
分離定数を1/λ2と仮定すると、左辺から

〔1/{κψ(t)}〕∂ψ(t)/∂t=1/λ2

両辺にκを掛けると

∂ψ(t)/ψ(t)=(κ/λ2)∂t

左辺は対数関数の微分なので

∂ln{ψ(t)}=(κ/λ2)∂t

時間tに関して積分すると、基本解は

ψ(t)=Aexp{(κ/λ2)t}

が得られる。変数分離した拡散方程式の右辺から

{1/X(x)}∂2X(x)/∂x2=1/λ2

両辺にX(x)を掛けた後に右辺を左辺に移項すると、

2X(x)/∂x2-(1/λ2)X(x)=0

となる。これは定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2-(1/λ2)=0

の解は、

D=±1/λ

なので、基本解は

X(x)=Bexp(x/λ)+Cexp(-x/λ)

従って、拡散方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=A{Bexp(x/λ)+Cexp(-x/λ)}exp{(κ/λ2)t}+ψ

となる。ABをA、ACをBと置き直すと、拡散方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=Aexp{(κ/λ2)t+x/λ}+Bexp{(κ/λ2)t-x/λ}+ψ

となる。
分離定数をiω/κと仮定すると、左辺から

〔1/{κψ(t)}〕∂ψ(t)/∂t=iω/κ

両辺にκを掛けると

∂ψ(t)/ψ(t)=(iω)∂t

左辺は対数関数の微分なので

∂ln{ψ(t)}=(iω)∂t

時間tに関して積分すると、基本解は

ψ(t)=Aexp{(iω)t}

が得られる。変数分離した拡散方程式の右辺から

{1/X(x)}∂2X(x)/∂x2=iω/κ

両辺にX(x)を掛けた後に右辺を左辺に移項すると、

2X(x)/∂x2-(iω/κ)X(x)=0

となる。これは定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2-(iω/κ)=0

の解は、i0.5=(1+i)/20.5から

D=±(1+i)(ω/2κ)0.5

なので、基本解は

X(x)=Bexp{(1+i)(ω/2κ)0.5x}+Cexp{-(1+i)(ω/2κ)0.5x}

従って、拡散方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=A[Bexp{(1+i)(ω/2κ)0.5x}+Cexp{-(1+i)(ω/2κ)0.5x}]exp{(iω)t}+ψ

となる。ABをA、ACをBと置き直すと、拡散方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=Aexp{iωt+i(ω/2κ)0.5x}exp{(ω/2κ)0.5x}+Bexp{iωt-i(ω/2κ)0.5x}exp{-(ω/2κ)0.5x}+ψ

となる。

核分裂 (nuclear fission)
 核エネルギーを外に取り出す方法の一つで、鉄より複雑で重いウラン、トリウム、プルトニウムなど原子番号の大きい、重い原子の原子核が中性子などを吸収することで割れて2つの原子に分かれるとともにいくつかの中性子を放出することを核分裂と呼ぶ。核分裂には、中性子、陽子、γ線、β線の吸収などによって誘起される誘起核分裂と自然に起きる自然核分裂とがある。核分裂の際、分裂の前の原子核の質量より、分裂の後に形成される原子核の質量の総和の方が小さくなる質量欠損が生じ、質量とエネルギーは等価であるとするアインシュタインの等価原理(E=mc2)に従って、質量欠損に相当するエネルギーが放出される。核分裂の際に放出されるこのエネルギーを核分裂エネルギーと呼ぶ。
 核分裂しやすい物質は、核分裂により放出された中性子によってさらに核分裂が連続して起こることがある。この現象を核分裂連鎖反応と呼ぶ。核分裂連鎖反応が起きるためには分裂した核から放出された中性子がすぐに次の核に衝突するほど核分裂物質が高密度である程度のまとまった量存在することが必要である。核分裂連鎖反応が起こり続けることを臨界と呼び、臨界が起こる核分裂物質量のことを臨界量と呼ぶ。
 固体地球内部の核分裂物質は、地球が形成されたときに取り込まれた星間物質が生成された超新星爆発の際に生成されたと考えられている。
核融合 (nuclear fusion)
 核エネルギーを外に取り出す方法の一つで、極端に高温な状態において熱運動しているいくつかの陽子といくつかの中性子で構成された複数の原子核が衝突すると、それらが融合して、より強く結合された重い原子核が形成されることを核融合と呼ぶ。核融合は、融合の前の原子核の質量の総和より、融合の後に形成される原子核の質量の方が小さくなる質量欠損が生じるときに起こり得る。核融合の際に、質量とエネルギーは等価であるとするアインシュタインの等価原理(E=mc2)に従って、質量欠損がエネルギーに変換される。
 例えば、太陽のような主系列星では、星の中心の温度が1000万Kを越え、陽子1個だけからなる4個の水素原子核が融合して陽子2個と中性子2個からなる1個のヘリュウム原子核になる核融合が進行している。原子質量単位Amuで表現すると、水素原子核の質量は1.0081Amu、ヘリュウム原子核の質量は4.0039Amuであるから、4個の水素原子核が融合して1個のヘリュウム核なる際の質量欠損は

4×1.0081Amu-4.0039Amu=0.0285Amu

となる。原子質量単位Amuは、陽子6個と中性子6個から構成される炭素12Cの質量を12.0000Amuとして定義されているので、

Amu=1.66×10-24g

である。従って、4個の水素原子核が融合して1個のヘリュウム核なる際の質量欠損は

0.0285Amu=0.0285×1.66×10-24g=4.731×10-27kg

と言うことになる。これに光速c(=3.00×108m/s)の自乗を掛けると、4個の水素原子核が融合して1個のヘリュウム核なる際の質量欠損に応じて放出されるエネルギーは

4.731×10-27kg×(3.00×108m/s)2=4.258×10-12J

と言うことになる。

0.0285/(4×1.0081)=0.007

だから、4個の水素原子核の質量が0.7%減少して1個のヘリュウム原子核が融合される際に、4.258×10-12Jのエネルギーに変換されることになる。
 質量欠損を伴う核融合により生じる最も重い原子核は56Fe(原子番号26、陽子数26、中性子数30、原子量56)であり、これより重い原子核を融合させようとすると、融合前より融合後の原子核質量が増加するため、エネルギーを放出するどころか吸収するので、鉄より複雑な元素合成は星の熱源にはなりえない。
 逆に、鉄より複雑で重いウランなどは、複数のより単純な原子核に解体すれば質量欠損が起こりエネルギーが放出されることを意味する。この状態を核分裂と呼び、核分裂の際に放出されるエネルギーを核分裂エネルギーと呼ぶ。
 主系列星は、質量が小さい星ほどHR図右下に並び、質量が大きい星ほでHR図左上に並ぶ。質量の大きい星ほど燃焼に使用される水素の量が大きいので、星の進化の速さは質量に依存し、重い星ほど速やかに水素を使い果たし、次にヘリュウムを燃焼させるようになり、主系列から離れて巨星へと進化する。最終的に、鉄まで核融合が進みエネルギー源が絶たれると、星は潰れて超新星爆発を起し、このとき鉄より重い重元素が生成され宇宙空間の星間物質の成分となる。この星間物質が重力収縮して星が再び誕生する。
 太陽の場合、核融合により、1秒間に、約7億トンの水素が約6億9500万トンのヘリュウムに変換され、約400万トンの質量減少が起こり、それに相当するエネルギー(mc2=3.86×1026J)がガンマー線の形態で放出される。このエネルギーは核の上の太陽大気に吸収され、より低温な温度で最射出されながら太陽大気上限に向かって伝達され、半径が69万8000kmの太陽大気上限である光球に達した時には、太陽大気の温度は5800Kにまで低下する。太陽から1億4960万km離れた地球に電磁波の形で届くエネルギーのほとんどすべては光球表面から可視光および赤外光として射出される。

核力 (nuclear force)
 重力、電気力とは別の自然力で、核子(陽子および中性子)の間に作用して、これらを1つの原子核として結び付けている極めて強い力を核力と呼ぶ。
 陽子はプラスの電荷を帯び接近すると互いに電気的な力で反発する。中性子は電荷を帯びていないので、陽子と電気的に結びつかない。中性子同士も電気的に結合しない。にもかかわらず、これら核子が原子核としてまとまっていられるのは、10−13 cm程度以下の核子間距離のみで作用する核力が極めて強力であるからである。
確率誤差 (probable error)
誤差の絶対値がこの値以内である確率と以上である確率が等しい値の誤差。rと表記されることが多い。誤差の分布が連続的でその確率密度がガウスの誤差関数に従う場合は、平均誤差を0.6745倍すると確率誤差が得られる。
可降水量 (precipitable water)
単位底面積の空気中内の水蒸気をすべて凝結させて液体の水にした場合の水深を、降水量と同様にmm単位で表したも。可降水量の値は、ミクロ波放射計やGPS衛星受信データから求める方法も開発されているが、一般的には高層気象データから計算により求める。
比湿qは、単位質量の空気塊中に含まれる水蒸気の質量を意味しているので、比湿qに空気密度ρを掛けたρqは水蒸気密度を意味することになる。水蒸気密度を地上から大気上限まで高度zに関して積分すれば可降水量WVが得られる。即ち、

       
WV=∫ρqdz
    0

である。状態方程式

dp=-ρgdz

を利用して積分変数を高度zから気圧pに変換して、

             p0
WV=1/g∫qdp
         0

により求めるのが一般的である。ここで、g;重力加速度である。
水蒸気密度は、絶対湿度a

a=217e/T

からも得ることができるので、絶対湿度aを用いて可降水量が得ることも可能である。ここで、e;水上気圧(hPa)、T;気温(K)である。絶対湿度aは、g/m3単位で表されているので、1000で除せば水蒸気密度そのものである。従って、これを地上から大気上限まで高度に関して積分すれば可降水量WVが得られる。即ち、

              
WV=0.217∫(e/T)dz
           0

である。
可降水量の全球平均値は25mm程度と言われている。これに対して、降水量の全球平均値は1000mm程度なので、実際の降水量は、大気中の全水蒸気が凝結して落下しただけではまかないきれず、同一の水蒸気が年間40回程度、即ち、9日〜10日ごとに、蒸発→凝結→降水を繰り返さなくてはならない勘定になる。
風の対数法則 (logarithmic wind velocity profile law)
浮力のない中立状態においては高度zの地表面近傍の平均水平風速uの鉛直分布が高度の対数に比例し、

u=(u*/k)ln(z/z0)

と表現できるという法則。ここで、u*;摩擦速度、k;カルマン定数、z0;粗度高である。
風の対数法則は、次のように説明される。
風速uは平均風速uとそれからの乱れu'に分けられ、

u=u+u'

と表現できる。u'>0の乱れは平均風速uの大きい上空からの空気塊の移動により生じる。空気塊の移動距離をℓとすると、

u'=-ℓdu/dz

と表現できる。ℓは混合距離と呼ばれ、壁(地表面)に近いほど小さく、

ℓ=kz

と仮定される。上向きの風速の乱れw'が水平風速の乱れu'と同程度の場合は、

w'=-ℓdu/dz

と置けるので、運動量フラックスτは、

τ=-ρu'w'=ρℓ2(du/dz)2=ρ(kz)2(du/dz)2

と表現できる。この式を変形すると、

zdu/dz=1/k(τ/ρ)0.5 → du=1/k(τ/ρ)0.5dln(z)

を得る。これをzに関してz0からzまで積分すると、z=z0ではu=0なので、

u=1/k(τ/ρ)0.5ln(z/z0)

となり、平均水平風速が高度の対数に比例する鉛直分布を示すことが導かれる。摩擦速度

u*=(τ/ρ)0.5

を用いれば、上式は、風の対数法則そのものとなる。温度成層が中立でない場合には、地表面から遠ざかると対数法則から外れる。

加速度 (acceleration)
速度ベクトルの時間変化。物体に作用する力の合力が0ではない場合に物体に加速度が生じる。
仮温度 (virtual temperature)
比湿が異なると乾燥空気と水蒸気の混合気体である湿潤空気の気体定数も異なるが、気象学では、伝統的に、比湿がいかなる値であっても湿潤空気を扱う際の気体定数を乾燥空気の気体定数と同じ一定の値として扱えるように、温度計で測定される実際の温度ではなく、実際の温度に補正を施した仮想の温度を用いる。即ち、湿潤空気と同じ圧力、密度をもつ乾燥空気の温度を想定して、これを仮温度と呼び、Tvと表記する。現在初めて邦訳されるならば、おそらく仮想温度ないしはバーチャル温度とされるであろう用語である。仮温度Tv(K)の定義式は、

Tv=T{1+q(1/ε-1)}

である。ここで、T;気温(K),q;比湿(無次元)、ε;密度比(=0.622)である。ε=0.622を代入すると、上式は、

Tv=T(1+0.608q)

となるが、気象学では、比湿は無次元ではなくg/kg単位で表示することが多いので、その場合は、

Tv=T(1+0.608q/1000)

となる。
仮温度は、温度計で計測される実際の温度ではなく、上記の定義式により比湿の大きさに従って実際の温度に補正を施した仮想の温度である。湿潤空気は温度計で計測される実際の温度Tより若干高温な温度、即ち、仮温度Tvの乾燥空気と全く同様に振舞うことを意味している。仮温度Tvを導入することにより、乾燥空気に対して成り立つあらゆる法則は、水物質の相変化を伴わない限り、当該法則の温度Tを仮温度Tvに置き換えるだけで、湿潤空気に対する法則としてそのまま利用することが可能になった。

慣性(inertia)
物体は、他のすべての物体から十分遠く離れて何らの影響も受けていない状態では、静止している場合には静止を、運動している場合には等速度運動を続ける性質を持っており、この性質を慣性と呼び、物体が慣性という性質を持つことを、慣性の法則と呼ぶ。
他のすべての物体から十分遠く離れて何らの影響も受けていない状態とは、完全に孤立した物体を意味する。我々の身近には完全に孤立した物体は存在しないが、静止または問う速度運動を続ける物体は存在する。この場合には、当該の物体には力が作用しているが、その力の合力が0になっている。
慣性系(inertia system)
物体の運動を運動方程式により表現するためには、物体の位置を表すための座標系が必須である。座標系上で物体の変位の2階時間微分d2x/dt2により加速度を求めるた時、運動方程式として

Fx=md2x/dt2

が成り立つ座標系を慣性系(慣性座標系)という。ここで、Fx;力のx軸成分、m;質量、d2x/dt2;x軸方向の変位である。
慣性座標系は、原点や座標軸が運動していてもかまわないが、その運動が非加速度運動である座標系である。太陽を原点とし、互いに直交する方向にある3つの恒星の方向をx,y,z軸とする恒星座標系は慣性系の典型とみなされる。
慣性振動 (inertia oscillation)
水平方向の運動方程式において、コリオリの力以外に力が作用しない時に空気塊が行う運動。常に進行方向右90°の方向に風速に比例して作用するコリオリの力が中心力として作用するので、空気塊は時計回りの円運動を行う。この円運動の軌跡を慣性円と呼ぶ。コリオリのパラメータをf、慣性円の曲率半径をr、風速をvとすると、中心力(=コリオリの力)と遠心力は、それぞれ、

fv  と  v2/r

で、両者が釣り合うのだから、

fv= v2/r

即ち、

r=v/f

である。円周の長さ

2πv/f

の慣性円上を速度vで移動するので、慣性振動の周期Tは、慣性円の円周長を速度で除して、

T=2π/f=2π/(2Ωsinφ)=π/(Ωsinφ)

と表される。ここで、π;円周率、Ω;地球の回転角速度、φ;緯度である。即ち、慣性振動の周期は風速に依存せず、地点の緯度にのみ依存する。

慣性モーメント (moment of inertia)
 位置ベクトルrに存在する質量mの質点にトルク(力のモーメント)r×Fを作用させると、位置ベクトルrの始点を中心とする質点の回転角速度ωが変化し、角加速度dω/dtが発生し、これらの関係は次のトルク方程式

r×F=mr2dω/dt

を満たす。即ち、作用する力のモーメントr×Fは、慣性モーメントmr2と質点に発生する角加速度dω/dtの積に等しく、同じ力のモーメントr×Fが作用しても質点に生じる角加速度dω/dtは質点によって異なる。この式の比例定数mr2は、質量mに対する回転の中心の回りの2次モーメントであり、このモーメントの値が大きいとトルクが掛かっても角速度ωの変化が起こりにくくそれまでの回転状態を持続しようとする性質(慣性)が強いことを意味するので、慣性モーメントと呼ばれる。
 剛体は多数の質点から成る質点系の一種であるが、回転運動をする場合にはすべての質点の回転軸が共通であるので、各質点の慣性モーメントの積算が剛体全体の慣性モーメントとなる。即ち、
   N
I=芭iri2
  i=1
と表現できる。ここで、;剛体を形成する質点の総数、;第i番目の質点の質量、;第i番目の質点の回転の中心からの距離である。

慣性力 (inertial force)
運動方程式は、慣性座標系上で

F=md2/dt2

と表現される。ここで、F;力、m;慣性質量、;位置ベクトル、d2/dt2;加速度である。力Fが作用することにより質量mに加速度d2/dt2が発生することを意味している。
座標系の原点を運動する質点上に取って同じ現象を記載すると、質点は常に原点にあり静止しているように見える。この時、常に静止しているのは、力が作用しないのではなく、作用する力の合力が0であるからである、と考える。即ち、上記の運動方程式を

F-md2/dt2=0

と表して、実存する力Fの他にその力とは逆方向に-md2/dt2という力が作用しているために合力が0となり、その結果釣り合いが取れているので質点は原点で静止し続ける、とみなすことができる。この時考えた実存する加速度とは逆の加速度を発生させる仮想の力を慣性力と呼ぶ。慣性力は実在の力ではないので、見かけの力と呼ばれることもある。物体が静止状態を含む等速度運動を行っている場合には慣性力は存在せず、非等速度運動を行っている場合に慣性力が存在する。物体の運動が円運動の場合の慣性力には、遠心力とコリオリ力がある。

乾球温度 (dry-bulb temperature)
乾球温度計の示度。感温部に装着されたウィックwickのにおける蒸発の潜熱の消費により降温する湿球温度より乾球温度は高い。
乾球温度計 (dry-bulb thermometer)
空気に直接暴露させて気温を測る温度計。空気に直接暴露させて気温を測る温度計を単体で用いる場合には、通常、単に、温度計と呼ぶ。乾球温度計という呼称は、湿球温度計とセットで乾湿(球温度)計として用いられる時に、湿球温度計とは別の乾湿温度計のもう一方の温度計に対して用いられるのが一般的である。
乾湿(球温度)計 (psychrometer)
乾球温度計と湿球温度計の2本の温度計からなる温度計で、測定される乾球温度計の示度(乾球温度)と湿球温度計の示度(湿球温度)の示度をから水蒸気圧を求める気象観測器。放射や熱伝導の影響を除去し、空気との熱交換速度を早くするための通風装置を備えたアスマン通風乾湿計がよく知られている。
乾湿計定数 (psychrometer constant)
乾湿計公式

e=E(Tw)-Cpp/{εL(Tw)}(Td-Tw)

における乾湿差Td-Twの項の係数、Cpp/{εL(Tw)}のこと。ここで、Td;乾球温度、Tw;湿球温度、E(Tw);湿球温度Twにおける飽和水蒸気圧、Cp;乾燥空気の定圧比熱、p;気圧、ε;比熱比(=0.622)、L(Tw);湿球温度Twにおける潜熱である。空気塊内における水物質の相変化による気温低下1℃当りの水蒸気圧の増加率を意味する。
乾湿差 (psychrometric difference)
乾湿温度計の乾球温度計の示度(乾球温度Td)から湿球温度計の示度(湿球温度Tw)を差し引いた値Td-Tw。湿球が凍りつかない限り、負の値を取ることはなく、通常は、正の値。乾湿差は相対湿度の大小に対応して変化し、水蒸気により飽和されている場合には0の値を取る。
間接測定 (indirect measurement)
目的量yと関係のある数種の量ziを測定し、その測定値ziに基づいて目的量yを算出する測定方法。間接的に測定される量の最確値の組み合わせで目的量の最確値が算出されるが、それぞれの測定値の誤差が伝播して観測測定値に誤差が発生する。
乾燥空気 (dry air)
水蒸気を除く大気を単一の気体として扱う際の呼称。当然分子式は示せないが、分子量は混合気体の組成気体の分子量を体積組成を荷重とする荷重平均として求められ、28.966である。実際の空気は、乾燥空気と水蒸気の混合気体であり、湿潤空気と呼ばれる。水蒸気の体積組成をwとすると、湿潤空気の分子量は、18w+28.966(1-w)、で与えられ、水蒸気の含有量が大きいほど湿潤空気の分子量は小さくなる。
乾燥断熱減率 (dry adiabatic lapse rate)
未飽和の空気塊を高度を断熱的に増加させた際の温度の減少率Γdのことで、

Γd=-dT/dz=g/Cp

と表現される。ここで、g;重力加速度、Cp;乾燥空気の定圧比熱である。即ち、地球大気中を空気塊が断熱的に上下動する際の温度の変化率は気象条件に関わらず一定である。g=9.80665ms-2 、Cp=1004Jkg-1K-1なので、乾燥断熱減率Γdの値は

Γd=g/Cp=0.976K/100m

である。
貫入性対流 (penetrative covection)
 自由対流層の上にある安定層下部に自由対流層上端を越えて自由対流層の上昇空気塊が貫入しておこる対流。安定層下端から貫入する上昇空気塊が持つ運動エネルギーは自由対流層のもつ対流有効位置エネルギーが変換されたものである。貫入後は上昇空気塊が負の浮力により負の仕事をされるため、再び、上昇空気塊が持つ運動エネルギーが急激に浮力ポテンシャルエネルギーに変換され、上昇気流の上昇速度は減少する。貫入後の浮力ポテンシャルエネルギーの増加量が自由対流層のもつ対流有効位置エネルギーに等しくなる高度で貫入空気塊の上昇速度はゼロとなる。この高度を貫入高度と呼ぶ。貫入性対流が発生している場所では、塔状積雲が形成される。
寒冷低気圧 (cold low)
低気圧の中心またはその近傍の気温が最も低温な温度分布を示す低気圧。偏西風波動の気圧の谷から切り離されて偏西風の南方域に寒気がプール状に孤立した形の切り離し低気圧は、寒冷低気圧の一例である。
 

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