中川用語集
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平均誤差(mean error)
誤差の自乗の平均値の平方根。σと表記されることが多い。二乗平均誤差(mean square error)とか標準誤差(standard error)と呼ぶこともある。誤差の分布が連続的でその確率密度がガウスの誤差関数に従う場合は、誤差の絶対値が平均誤差以内である確率は68.3%である。平均誤差を0.6745倍すると確率誤差が得られる。
平均太陽(mean sun)
黄道上の真太陽の公転周期と全く同一の公転周期で天の赤道上を等速で公転する仮想の太陽を平均太陽と呼ぶ。黄道上を平均太陽と等角速度で公転する仮想の太陽を力学平均太陽と呼ぶ。真太陽、平均太陽および力学平均太陽は、同時に春分点に位置する。
平年値(normarls, climate normarls, 30-year normals)
気圧、気温、湿度、風速等の気象要素の長期的な平均値を平年値と呼び、平年値とそれからの変動により特徴付けられる大気の総合状態を気候と呼ぶ。期間を区切ってその間の平均と標準偏差を求めれば、平均値とそれからの変動を認識することができるが、気象要素は様々なスケールの時間変化を伴っているので、平均値や標準偏差の値は統計期間の長さに依存する。気象要素には乱流や日変化、年変化を初めとして様々なスケールの周期的変動が存在するので、統計期間はこれらの周期より長くなくてはならない。平均を求める区間を充分に長く取ると、求められる平均値や標準偏差の値は統計区間に依存せず一定値に収束することが期待される。この時の平均値を平年値と呼ぶ。本来は時間変化しない大気の状態として提唱された気候が、長期的には周期やジャンプ、トレンドを伴った変動をすることが明らかになっているので、統計期間を長くし過ぎると、平年値が気候の長期的な変動の影響を受けてしまうことが懸念される。現在の気象学においては、一般的には、世界気象機関(WMO)の推奨に基づいて、平年値の求める統計期間として30年間が用いられている。ある瞬間の平年値を常に直前30年間の平均値とすると、実際の作業が大変困難なので、西暦10年代ごとに、直前30年間の平均値を平年値として使用している。例えば、2001年〜2010年の10年間は、1971年〜2000年の間の30年間の平均値を平年値として用い、2011年〜2020年の10年間は、1981年〜2010年の間の30年間の平均値を平年値として用いる。
β効果(β effect)
 β面近似されたコリオリのパラメータの緯度依存係数βによる効果。
βドリフト(β drift)
 β面近似の効果で低気圧が移動すること。水平渦度方程式は

d(ζ+f)/dt=-(ζ+f)∇・V

と表現できる。ここで
ζ;相対渦度、f;コリオリのパラメータ、ζ+f;絶対渦度、;水平風ベクトルである。水平風の収束・発散があれば絶対渦度が増加・減少し、無ければ保存されることを意味している。上式左辺をオイラー流に表現して、∂ζ/tについて解くと、

∂ζ/t=-V・∇ζ-βv-f∇・V-ζ∇・V

を得る。これは、相対渦度の局所変化を与える。低気圧は、相対渦度の局所変化が最大になる方向に移動するので、上式のxおよびyでの微分を調査する。

V・∇ζ

∇・V

は点対象として扱えるので

xで編微分すると右辺は第2項のみが残り

∂(∂ζ/t)/x=-β∂v/dx

となる。-v/dxは低気圧の西側で最大なので、第2項の貢献により低気圧は西向きに移動する。

yで編微分すると右辺は第3項のみが残り

∂(∂ζ/t)/y=-f/dy∇・V=-β∇・V

となる。f/dyは低気圧の北側で最大なので、収束場であれば第3項の貢献により低気圧は北向きに移動する。いずれも、コリオリのパラメータの緯度依存係数βが原因で起こるので、この移動をβドリフトと呼ぶ。

β面近似(β plane approximation)
 コリオリのパラメータf

f=2Ωsinφ

の緯度依存性を最も簡単な形で考慮するために、y軸を南北方向に取って、

f=f0+βy

と置くことが多用され
ベータ面近似と呼ばれる。ここで、Ω;地球の回転角速度、φ;緯度である。

β=∂f/∂y=(∂f/∂φ)(∂φ/∂y)

であり、かつ、

y=Rφ

なので、

β=2Ωcosφ/R

となる。ここで、R;地球の半径である。βはyの関数となり決して一定の係数ではなく、地表面が球形であることを正しく反映することはできないが、とりあえず、コリオリのパラメータfが緯度によって変化することが何をもたらすかを、少なくとも定性的に見ることを可能にする。

ベルゲン学派(The Bergen School of Meteorology)

 1912年にドイツのライプツィヒ大学地球物理学研究所所長に迎えられ、研究成果をあげていたVilhelm Bjerknes(1862-1951)は、1914年の第一次世界大戦突発により、学生や助手の多くを失った。ノルウェーでの研究を断念して駆けつけた彼の息子のJacob Bjerknes(1887-1975)らの支援にも関わらず、戦争はライプチヒでのの研究と生活を困難にした。丁度その頃提案された、ベルゲンの新大学への地球物理学の研究所の設立を受諾して、Vilhelm Bjerknesは1917年にベルゲン地球物理学研究所を設立した。この地で「On the Dynamics of the Circular Vortex with Applications to the Atmosphere and to Atmospheric cows and Wave Motion」を発表するとともに、多くの後継者を育てた。彼が育てた学派は「気象学のベルゲン学派」ないしは「ノルウェー学派」と呼ばれる。北欧に展開した観測網の観測結果を解析して同学派が提唱した低気圧モデルは、ノルウェー学派の温帯低気圧モデルとして良く知られている。Vilhelm Bjerknesは1926年にオスロ大学に移り、1932年に同大学を退官し、1951年に心臓病で死亡した。Vilhelm Bjerknesと並んでノルウェー学派を代表する研究者である息子のJacob Bjerknes(1887-1975)は1918年〜1940年ベルゲン地球物理学研究所の所員、予報担当官、教授を勤めた後、1940年からはカリフォルニア大学物理学科の気象学教授となり、1945年にはカリフォルニア大学気象学科を創設した。新設の気象学科は急速に成長し、短期間のうちに気象学における研究・教育の世界的な拠点となり、Jacob Bjerknesは近代気象学の創始者の一人となった。

変位(displacement)
 平衡点からのずれ。一般に平衡点に原点を置くので、原点からのずれ、即ち、原点を起点とする位置ベクトル。
 

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