中川用語集
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バイアス(bias)

 電子回路において本来の信号の重畳した交流信号や直流信号をバイアスと呼ぶ。また、統計学において、系統誤差のことをバイアスと呼ぶ。偏りと表記することもある。

灰色大気(gray atmosphere)

 太陽放射に対しては透明、赤外放射に対しては不透明であり、吸収係数は赤外放射の射出域で波長によらず一定で、かつ、気圧や気温に依らない仮想の大気。
大気中の吸収物質は複雑な吸収スペクトルを持つ分子なので、波長や気圧、気温に依らない単一の吸収関数を仮定することは非常に粗い近似である。しかしながら、吸収帯では多数の吸収線が重なり合っているので、特に下層大気においては、見かけほど粗い近似ではないとされる。

灰色大気の放射時定数(radiative time constant of a gray atmosphere)

灰色大気の気温が放射平衡気温からズレた場合に気温が有限時間を掛けて放射平衡気温に近づくように変化する速度を示すパラメータは放射時定数と呼ばれ、τと表記される。
射出率ε、平均気温Ta、下端気圧p0の単位底面積をもつ灰色大気柱を考えよう。
大気柱は太陽放射に対しては透明なので、太陽放射は大気下端の地表面にそのまま達し、地表面に

I0(1-α)/4

が吸収され、残りの

I0α/4

が大気柱をそのまま通過して宇宙空間に放出される。
一方、大気柱は上端および下端から宇宙空間および地表面に向かって、それぞれ、

εσTa4

の赤外放射を射出する。地表面に向かった赤外放射は地表面にすべて吸収される。
さらに、地表面は大気柱に向かって、

σT4

の赤外放射を射出し、そのうちの

εσT4

は大気柱に吸収され、残りの

(1-ε)σT4

は大気柱を通過して宇宙空間に放出される。
以上の放射のやり取りの結果、大気柱全体が吸収するエネルギー総量は、

εσT4-2εσTa4

ということになる。
エネルギー保存則より、このエネルギー総量は、大気柱全体の温度変化dTa/dtに見合う値でなくてはならない。即ち、大気柱全体の熱収支式として

mCpdTa/dt=εσT4-2εσTa4

が成り立つ。ここで、m;大気柱の全質量、Cp;乾燥空気の定圧比熱(=1004Jkg-1K-1)である。
気温Taと地表面温度,Tは、平衡温度Ta*, T*とそれからの偏差Ta', T'の和、即ち、

Ta=Ta*+Ta'

T=T*+T'

として表せる。従って、大気柱全体の熱収支式は、

mCpd(Ta*+Ta')/dt=εσ(T*+T')4-2εσ(Ta*+Ta')4

と表現できる。右辺の( )をはずすと、

mCpd(Ta*+Ta')/dt=εσT*4+4εσT*3T'-2εσTa*4-8εσTa*3Ta'

と展開できる。大気柱全体の熱収支式は平衡温度だけでも成り立ち、

mCpdTa*/dt=εσT*4-2εσTa*4

を満足するから、この式を上記の展開式から減じることにより、平衡温度Ta*からのズレTa'の支配則として

mCpdTa'/dt+8εσTa*3Ta'=4εσT*3T'

が得られる。この微分方程式の基本解は、
  
Ta'=Ta'0exp{-(8εσTa*3/mCp)t}

となるので、当該大気柱の放射時定数τは、

τ=mCp/8εσTa*3

ということになる。
 大気上限および地表面における平衡状態での熱収支式は、それぞれ、

I0(1-α)/4+εσTa*4=σT*4

I0(1-α)/4=εσTa*4+(1-ε)σT*4

であるから、両式からI0(1-α)/4を消去すると

2Ta*4=T*4

でなくてはならない。従って、

σTa*4=I0(1-α)/{4(2-ε)}

σTg*4=I0(1-α)/{4(1-ε/2)}

である。また、大気柱の全質量は大気柱下端の気圧p0を重力加速度で除せば求まるので、

m=p0/g

である。従って、大気柱の放射時定数τは、

τ=4(2-ε)p0CpTa*/8gεI0(1-α)

とも表現できる。
 上述の諸式に、典型的な値ε=0.95、p0=101324.5hPa、Cp=1004Jkg-1K-1、g=980.665ms-2、I0=1367Wm-2、α=0.31を与えてみると、平衡気温Ta*=250.87K、平衡地温Tg*=298.33Kとなり、灰色一層大気の放射時定数τは

τ=1524735秒=17.6日

と見積もられる。このことは、大気層における放射過程は極めてゆっくり作用するので、数日間程度以下の短時間の大気変化を考察する際には、放射過程は無視して良いことを意味する。しかしながら、長期間の大気変化(即ち気候変化)では、放射過程がエネルギーの発生や消滅の分布に大きく影響を与えるので無視できない。
灰色大気の放射平衡(radiative equlibrium in a gray atmosphere)

灰色大気においては消散係数kλは波長に依存しないので、入射角θで強度Iの平行放射が層厚dzの気層に入射する際の気層中の路程secθdzに比例した減衰が生じると同時に、路程に存在する大気による新たな放射が付加される際の気層下端での放射変化量dIを表すシュヴァルツシルトの式は、

dI=-Ikρsecθdz+(σ/π)T4kρsecθdz

と表記される。ここで、T;温度、ρ;密度、k;消散係数、B;プランクの関数である。右辺第1項は気層による入射放射の減衰を表し、第2項は気層による放射の射出を表す。右辺両校に共通に出てくるkρsecθdzは光学的路程と呼ばれるが、第1項では気層の吸収率を意味し、第2項では気層の射出率を意味する。方位角について0〜2π、高度角について0〜π/2および0〜ーπ/2の間積分した後、整理すると、

dF↑/dτ=F↑-σT4

dF↓/dτ=-F↓+σT4

が得られる。ここで、F↓;下向長波長波放射フラックス密度、F↑;上向き放射フラックス密度、τ;光学的深さである。光学的深さτは、

dτ=-3/2kdu

と定義され、大気上限はτ=0で表され、地表面はτ=τsで表される。
上記の2式の差と和を取ると、それぞれ、

d(F↑- F↓)/dτ=F↑+F↓-2σT4

d(F↑+ F↓)/dτ=F↑-F↓

が得られる。常に放射平衡が成り立っているので、d(F↑- F↓)/dτ=0 であるから、

F↑+F↓-2σT4=0

つまり、常に、

σT4=(F↑+F↓)/2

が成り立たねばならない。また、d(F↑- F↓)/dτ=0 より、

F↑- F↓=一定=A

でなくてはならない。これは、F↓0=0 の大気上端でも成り立ち、かつ、大気上限の上向き赤外放射フラックス密度F↑は地球大気系に吸収される太陽放射フラックス密度I0/4(1-α)に等しいから

A=F↑0=I0/4(1-α)

である。ここで、α;惑星アルベド(灰色大気は太陽放射に対して透明なので、地表面アルベドに等しい)である。従って、

d(F↑+ F↓)/dτ=F↑- F↓=I0/4(1-α)

である。この式を積分すると、

F↑+ F↓=I0/4(1-α)τ+C

が得られる。この式も、F↓=0 の大気上端(τ=0)でも成り立たねばならないので、

F↑0=C=I0/4(1-α)

だから、

F↑+ F↓=I0/4(1-α)τ+I0/4(1-α)=I0/4(1-α)(τ+1)

である。
以上のことから、

F↑=I0/4(1-α)(τ/2+1)

F↓=I0/4(1-α)τ/2

σT4=I0/8(1-α)(τ+1)

という表現が得られる。
τ=τsの地上では、

F↑s=I0/4(1-α)(τs/2+1)=σTs4

F↓s=I0/8(1-α)τs

σTa4=I0/8(1-α)(τs+1)

とである。ここで、Ts;地表面温度、Ta;地上気温である。
 以上の記載の内容を図示すると、下図の通りである。下向き長波放射フラックス密度も上向き長波放射フラックス密度も気温での黒体放射フラックス密度も、いづれも、鉛直高度を大気上限からの光学的深さに対して線形的に、かつ、互いに平行し増加しており、地表面において、地表面温度が地上気温より明瞭に高温となるギャップが存在することが、大きな特徴である。地表面温度も地上気温も、気温も、すべて大気上限からの光学的深さに依存して決定され、大気量が増加するほど高温になることを、温室効果と呼ぶ。


 

ハイドロリックジャンプ(hydraulic jump)

 流れが射流から常流に変わる際に、流れの状態は突然変化する現象。跳ね水あるいは跳水現象とも呼ばれる。局地風のチヌーク、フェーン、ボラ等、安定成層したシアー流や逆転層で蓋をされた混合層が山岳を越える際の風下側斜面にハイドロリックジャンプが発生することがある(下図参照)。


風下側斜面にハイドロリックジャンプが発生する際は、

UH/{N(h-H)}≒1

が成り立つとされる。ここで、UH;山頂風速、N;ブラントバイサラ振動数、h;風上側混合層厚、H;山頂高度であり、上式は一種のフルード数である。ブラントバイサラ振動数Nは風下波動の振動数を意味するので、風下波動の周期は2π/Nと表される。標準的な大気(温位θ=288.15K、温位勾配∂θ/∂z=0.0035Km-1、重力加速度g=9.80665ms-2)のプラント・バイサラ振動数Nは0.0109s-1、プラント・バイサラ振動周期2π/Nは575.7sなので、標準的な大気の場合の風下波動は山頂風速UHの575.5倍と見積もられる。即ち、山頂風速UHのが10ms-1、20ms-1、30ms-1の場合の波長は、それぞれ、約6km、12km、18kmと見積られる。

UH/{N(h-H)}≠1

の場合は、山越え気流は風下側斜面で剥離する。
パイロットバルーン観測(pilot balloon observation)

 浮力を調整した気球を放球し、一定時間間隔で測定したその方位角と高度角の値から求めた気球の3次元的位置情報に基づいて上層の水平風の鉛直構造を把握する観測方法。パイバル観測とも言う。気球の3次元的位置のうち、高度の増加は気球の浮力によるが、水平方向の位置の変化は気球の回りを充填している空気の動きによる。即ち、気球は眼に見えない空気の動きを可視化させるためのトレーサーとして利用されている。


 
パイバル観測風景(左手前の三脚上に設置された測風用経緯儀により右手前方を上昇中の赤色の気球を追尾し、方位角・高度角を一定時間間隔で記録する)

 自重wg重の気球に純浮力Lgを与えると、気球は一定速度Vで上昇する。この時、気球に作用している力は、重力wgと浮力Qgおよび抵抗Rの3者である。 一方、気球の純浮力Qgは

Qg=(4/3)π(ρ−σ)ga3

と表される。ここで、g:重力加速度、a:気球半径、ρ:空気の密度、σ:気球内部のガス密度である。気球の自重をwgとすると、気球の純浮力Lgは

Lg=(Q-w)g

である。純浮力が正の値を持てば気球は上昇する。 大気中を速度Vで上昇する気球に掛かる抵抗Rは、

R=ζπρa2V2(ν/aV)n(k/ρV2)1-m

となることが知られている。ここで、ζ:表面形状に依存する定数、ν:空気の静粘性係数、k:空気の弾性率、m,n:実験定数である。 抵抗は上昇速度に依存しており、上昇速度が大きいほど抵抗も大きくなる。上昇速度は純浮力の存在によって発生するが、上昇速度が大きくなり過ぎると純浮力を上回る抵抗が生じ気球は浮力を失ってしまう。浮力を失って上昇速度が鈍ると抵抗が減少するので、気球の浮力が復活する。結局、気球は抵抗が純浮力と釣り合う速度で等速上昇運動をすることになる。この速度は、終端速度と呼ばれる。純浮力と抵抗が等しくなる終端速度V(m/s)は、最終的に、

V=K0(1-ats+b冪s-cz)[L/(L+w)1/3]1/2m-n

と整理されている。ここで。冪s=ps-p0、ps:気圧(mmHg)、p0:基準気圧(760mmHg)、ts:地上気温(℃)、z:地上高度(m)である。 実験により、K0=46.02, n=1, m=1.591, a=0.0011, b=0.0002, c=0.000012となることが知られているので、上式は、

V=46.02(1-0.0011ts+0.0002冪s-0.000012z)[L/(L+w)1/3]1/2.182

となる。 z=0m、ps=760mmHg、ts=0℃の場合、上式は

V=46.02[L/(L+w)1/3]1/2.182

となる。この式により、自重w=20(g)の気球に、0〜100gの純浮力を与えた場合の上昇速度を求めた結果を下図に示す。

 純浮力20g弱で上昇速度は100m/sを超え、純浮力60g弱で上昇速度150m/sを超える。純浮力18.3gを与えると上昇速度は100m/sとなる。
観測結果を処理して、上層風の分布を解析する。
1)放球後の経過時間から気球高度hを決定する。30秒で50mづつ高度増加。
2)気球高度hと気球高度角θから、気球の直下点までの距離Lを、

  L=h/tanθ

 として求める。
(3)
  直下点までの距離Lと方位角φから、気球のx座標とy座標を

 x=Lsinφ

 y=Lcosφ

  として求める。
4)すべての高度のデータを処理して、地図上に(xi,yi)をプロットしたものを航跡図と呼ぶ。気球が上昇したのは自分の浮力のせいだが、水平方向に移動したのは気球の周囲の空気塊の移動のせい。30秒間の気球の軌跡は、当該気層の30秒間平均風程に等しい。
5)30秒間隔の2つの気球の水平座標(xi,yi),(xi+1,yi+1)のデータから、
  v={(xi+1-xi)2+(yi+1-yi)2}0.5/30

  として風速vを求め、

   d=180+tan−1{(xi+1-xi)/(yi+1-yi)}

  として風向dを求める。
6) 始点を共通にして各高度の風ベクトルを1枚の図に示し、各風ベクトルの終点を下層から上層へ結んだ線をシアホドグラフと呼ぶ。シアホドグラフ解析により、風の鉛直構造の理解が容易になる。
7)鉛直時間断面図に上を北、右を東、下を南、左を西として風ベクトルを記した図を風のシーケンス図と呼ぶ。シーケンス図解析により風の鉛直構造の時間変化の把握が用意になる。
爆弾低気圧(bomb cyclone)
  24時間の平均の1時間当りの気圧低下速度が最低でも1hPaを上回り、24時間以内に中心気圧示度が24hPa以上低下するほど急速に発達する移動性定気圧(中緯度低気圧)を爆弾低気圧と呼ぶ。
 500hPa面の気圧の谷の下流約750kmに位置する南西の偏西風の強風域内で地上の惑星波の谷の中かその前方に位置する寒候季(晩秋〜早春)の海上(北西太平洋、北西大西洋、地中海)で形成され、寒気を伴う。
 平成20年1月23日から24日にかけて日本海を東進した日本海定気圧もこの条件に合致する。1月23日午前9時に1016hPaだった島根県沖の低気圧が、24日午前9時には渡島半島に達して988hPa、25日午前9時には北海道東方沖に達して968hPaの中心示度となり、典型的な爆弾低気圧となった。



 平成20年1月22日午前9時        平成20年1月23日午前9時


 平成20年1月24日午前9時        平成20年1月25日午前9時
波数(wave number)
緯度線に沿って地球を一周する間に物理量が振動する回数。

 

波束(wave packet)
 周期や位相速度が異なる複数の波が重なり合って空間上の狭い範囲に波形のピークを持つ波形を示すとき、これを波束と呼ぶ。
旗雲(banner cloud)
山の稜線から風下に旗のようにたなびく雲。層積雲の一種。安定成層した乾燥気層が稜線を越えて湿潤気層に遭遇する際に、乾燥気層と湿潤気層の間の混合層が飽和状態になる場合に、出現する。

(http://mountainweb.cot.jp/f52/ym5222.jpgより)
発散(divergence)
 u/∂xと∂v/∂yの和を発散と呼び、記号Dで表す。即ち、

D=∂u/∂x+∂v/∂y

である。水平発散と呼ばれることもある。ここで、u;西風成分(m/s)、v;南風成分(m/s)であり、発散Dの単位はs-1である。
 最初に原点を囲み、頂点が軸上にある単位面積の正方形領域を占めていた空気塊が、1秒後にどのように運動すれば、D>0となるかを考えてみる。
x軸正側の頂点にある空気粒子は、原点から見て、∂x>0なので∂u>0、即ち、西風成分が原点より大きければ、D>0に貢献する。
x軸負側の頂点にある空気粒子は、原点から見て、∂x<0なので∂u<0、即ち、東風成分が原点より大きければ、D>0に貢献する。
y軸正側の頂点にある空気粒子は、原点から見て、∂y>0なので∂v>0、即ち、南風成分が原点より大きければ、D>0に貢献する。
y軸負側の頂点にある空気粒子は、原点から見て、∂y<0なので∂v<0、即ち、北風成分が原点より大きければ、D>0に貢献する。
即ち、Dの値が正の場合、最初に原点の回りの正方形領域を占めていた空気塊は、1秒後もやはり、正方形領域を占めており、回転はしていないが、1の面積がD大きい1+Dとなるように原点から広がるような運動をしていることを意味している。このような運動を発散と言う。Dの絶対値が大きいほど、発散が顕著であることを意味している。実際の気象現象においては、発散は高気圧領域の地上付近に認められる。
 逆に、Dの値が負の場合、最初に原点の回りの正方形領域を占めていた空気塊は、1秒後もやはり、正方形領域を占めており、回転はしていないが、1の面積がD小さい1-Dとなるように原点に向って集まるような運動をしていることを意味している。このような運動を収束と言う。Dの絶対値が大きいほど、収束が顕著であることを意味している。実際の気象現象においては、収束は低気圧領域や前線の地上付近に認められる。
 風vは地衡風成分vgと非地衡風成分vaに分けられるが、地衡風成分vgは収束発散を持たない。
波動(wave)
 物理量の周期的な時間変化が空間方向に伝播する現象を波動、あるいは波と呼ぶ。媒質が進行方向に平行に単振動する波動(波)を縦波、垂直に単振動する波動(波)を横波と呼び、区別する。弦の振動や、音波、水面の波、あるいは地震波のように物質の振動が媒質を通して伝播する現象だけでなく、電磁波のように媒質がない空間を伝播する現象も知られている。
波動方程式(wave equation)

 ∂2ψ/∂t2=c22ψ

の形の偏微分方程式を波動方程式と呼ぶ。ここで、ψ;物理量、t;時間(s)、c;伝播速度(m s-1)である。
x方向1次元の場合、波動方程式は

2ψ/∂t2=c22ψ/∂x2

と表される。解をψ=ψ(x,t)=X(x)ψ(t)と仮定して、上式を変数分離すると、

X(x)∂2ψ(t)/∂t2=c2ψ(t)∂2X(x)/∂x2

となる。この両辺をc2X(x)ψ(t)で除すと

{1/c2ψ(t)}∂2ψ(t)/∂t2={1/X(x)}∂2X(x)/∂x2

となり、両辺の値は一定値になり、分離定数separation constantと呼ばれる。分離定数の与え方によって、異なる一般解が得られる。
 分離定数を-1/λ2と仮定すると、左辺から

1/{c2ψ(t)}〕∂2ψ(t)/∂t2=-1/λ2

両辺にc2ψ(t)を掛けると

2ψ(t)/∂t2=-(c22)ψ(t)

が得られる。右辺を左辺に移項すると、

2ψ(t)/∂t2+(c22)ψ(t)=0

となる。これは定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2+(c22)=0

の解は、

D=±ic/λ

なので、基本解

ψ(t)=Acos(ct/λ)+Bsin(ct/λ)

が得られる。変数分離した波動方程式の右辺から

{1/X(x)}∂2X(x)/∂x2=-1/λ2

両辺にX(x)を掛けた後に右辺を左辺に移項すると、

2X(x)/∂x2+(1/λ2)X(x)=0

となる。これも定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2+(1/λ2)=0

の解は、

D=±i/λ

なので、基本解は

X(x)=Ccos(x/λ)+Dsin(x/λ)

従って、波動方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)={Acos(ct/λ)+Bsin(ct/λ)}{Ccos(x/λ)+Dsin(x/λ)}

となる。
分離定数を1/λ2と仮定すると、左辺から

1/{c2ψ(t)}〕∂2ψ(t)/∂t2=1/λ2

両辺にc2ψ(t)を掛けると

2ψ(t)/∂t2=(c22)ψ(t)

が得られる。右辺を左辺に移項すると、

2ψ(t)/∂t2-(c22)ψ(t)=0

となる。これは定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2-(c22)=0

の解は、

=±c/λ

なので、基本解

ψ(t)=Aexp(ct/λ)+Bexp(-ct/λ)

が得られる。変数分離した波動方程式の右辺から

{1/X(x)}∂2X(x)/∂x2=1/λ2

両辺にX(x)を掛けた後に右辺を左辺に移項すると、

2X(x)/∂x2-(1/λ2)X(x)=0

となる。これも定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2-(1/λ2)=0

の解は、

D=±1/λ

なので、基本解は

X(x)=Cexp(x/λ)+Dexp(-x/λ)

従って、波動方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)={Aexp(ct/λ)+Bexp(-ct/λ)}{Cexp(x/λ)+Dexp(-x/λ)}

となる。
分離定数をiω/κと仮定すると、左辺から

1/{c2ψ(t)}〕∂2ψ(t)/∂t2=iω/κ

両辺にc2ψ(t)を掛けると

2ψ(t)/∂t2=(ic2ω/κ)ψ(t)

が得られる。右辺を左辺に移項すると、

2ψ(t)/∂t2-(ic2ω/κ)ψ(t)=0

となる。これは定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2-(ic2ω/κ)=0

の解は、i0.5=(1+i)/20.5から

D=±(1+i)c(ω/2κ)0.5

なので、基本解

ψ(t)=Aexp{(1+i)c(ω/2κ)0.5t}+Bexp{-(1+i)c(ω/2κ)0.5t}

が得られる。変数分離した波動方程式の右辺から

{1/X(x)}∂2X(x)/∂x2=iω/κ

両辺にX(x)を掛けた後に右辺を左辺に移項すると、

2X(x)/∂x2-(iω/κ)X(x)=0

となる。これも定係数2階常微分方程式で、特性方程式

D2-(iω/κ)=0

の解は、i0.5=(1+i)/20.5から

D=±(1+i)(ω/2κ)0.5

なので、基本解は

X(x)=Cexp{(1+i)(ω/2κ)0.5x}+Dexp{-(1+i)(ω/2κ)0.5x}

従って、波動方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=[Aexp{(1+i)c(ω/2κ)0.5t}+Bexp{-(1+i)c(ω/2κ)0.5t}][Cexp{(1+i)(ω/2κ)0.5x}+Dexp{-(1+i)(ω/2κ)0.5x}]

となる。

 

バルク法(bulk method)

接地境界層内の基準高度一点の風速u、気温T、絶対湿度aと地表面の風速、気温Ts、絶対湿度asのデータから、地表面における運動量τ、顕熱H、潜熱ℓEのフラックスを求める方法をバルク法と呼び、以下の式で表される。

τ/ρ=CMu2

H/Cpρ=CHu(Ts-T)

ℓE=ℓCEu(as-a)

ここで、CM、CH、CEは各々運動量、顕熱、潜熱に対するバルク係数と呼ばれ、以下の式で表される。

CM=u*2/u2=(ΦM/kM-2

CH=CM-1/2(kMCM-1/2/kH+St-1

CE=CM-1/2(kMCM-1/2/kE+Da-1

ここで、ΦMは運動量のシアー関数であり、kM、kH、kEはそれぞれ運動量、顕熱、潜熱に対するカルマン定数である。またSt-1とDa-1は、低層スタントン数と低層ダルトン数で、中立成層下では以下の式で表わされる。

St-1=-(Ts−T0M)/T*=kH-1ln(z0M/z0H

Da-1=-(as−a0M)/a*=kE-1ln(z0M/z0E

上式のT*とa*は、それぞれ、摩擦温度と摩擦絶対湿度で、添字0M、0E、0Hは、それぞれ、運動量の粗度高、絶対湿度の粗度高、温度の粗度高における値を意味する。低層ダルトン数Da-1が小さな値の場合は、潜熱輸送のバルク係数CEは運動量のバルク係数CMにほぼ等しいとしても差しつかえないが、低層ダルトン数Da-1が大きくなるに従って、CEはCMよりも小さくなる。

反射(reflection)

電磁波、音波その他の波動が、それまで伝播してきた絶対屈折率n1の媒体とは別の絶対屈折率n2の媒体との境界面に入射すると、波動の伝播方向や振幅、速さが変化する。波動の伝播方向が逆になってもとの媒体内を伝播することを反射と呼び、波動の伝播方向は変化するものの別の媒体内を伝播することを屈折(又は透過)と呼ぶ。反射と屈折(又は透過)は同時に起こる現象であり、反射波の強度と屈折波(又は透過波)の強度の和は入射波の強度に等しく、入射波と反射波の干渉波の変位と屈折波(又は透過波)の変位は反射面で等しいだけでなく、両方の変位の空間勾配は反射面で滑らかにつながる。
 入射波の強度に対する反射波の強度の比を強度反射率と呼び、その補数を強度透過率と呼ぶ。入射波の振幅に対する反射波の振幅の比を振幅反射率と呼び、その補数を振幅透過率と呼ぶ。強度反射率rは、フレネルの公式により、入射角αと屈折角βの関数

r=0.5{(n1cosα- n2cosβ)2/(n1cosα+ n2cosβ)2+(n1cosβ- n2cosα)2/(n1cosβ+ n2cosα)2}
 =0.5{sin2(
α-β)/sin2(α+β)+tan2(α-β)/tan2(α+β)}

と表される。入射角αと屈折角βは、スネルの法則により、相対屈折率n12と関係付けられ、

n12=sinα/sinβ= n2/ n1

と表されるから、平面の強度反射率rは、入射角αと相対屈折率n12との関数である、とも言える。
 垂直入射波(入射角α=0)の場合、屈折角βおよび反射角も0となり、平面の強度反射率rを表すフレネルの公式は、

r={(n1-n2)/(n1+n2)}2={(n12-1)/(n12+1)}2

と簡略化される。強度吸収率aは強度反射率rの補数だから、

a=4n12/(n12+1)2

と表される。
 垂直入射波の場合に限定して、反射率、透過率と屈折率との関係についての説明を試みる。垂直入射波をx軸方向の進行sine波とすると、垂直入射波の変位y0

y0=A0sin(k1x-ωt)

と表せる。ここで、A0;垂直入射波振幅、k1;波数、ω;角振動数、t;時間である。入射波の位相速度vは、

v=
ω/k1

である。x=0に反射面があり、ここで、一部が反射され、残りは透過するとする。垂直反射波の変位yr

yr=Arsin(-k1x-ωt)

と表され、透過波の変位yt

yt=Atsin(k2x-ωt)

と表される。
 反射面x=0では、入射波と反射波の干渉波と透過波は同じ変位でなくてはならないから、

A0sin(-ωt)+Arsin(-ωt)=Atsin(ωt)

が常に成り立つ。即ち、

A0+Ar=At…………………………………………@

でなくてはならない。
 反射面x=0では、入射波と反射波の干渉波と透過波は滑らかにつながっていなくてはならないから、入射波と反射波の干渉波の勾配と透過波の勾配は等しいので、

{A0sin(k1x-ωt)+ Arsin(-k1x-ωt)}/x x=0={Atsin(k2x-ωt)}/x x=0

が常に成り立つ。即ち、

k1A0cos(k1x-ωt)-k1Arcos(-k1x-ωt) x=0=k2Atcos(k2x-ωt) x=0

つまり

k1A0cos(-ωt)-k1Arcos(-ωt)=k2Atcos(-ωt)

が常に成り立つのだから、

k1A0-k1Ar=k2At…………………………………………A

でなくてはならない。
 @とAは、ArAtに関する21次連立方程式なので、これを解けば、

Ar=(k1-k2)/(k1+k2)A0

At=2k1/(k1+k2)A0

が得られる。k1=2π/λ1およびk2=2π/λ2なので、上式は、

Ar=(λ2-λ1)/(λ1+λ2)A0

At=2
λ1/(λ1+λ2)A0

とも表記できる。ここで、λ1;入射波および反射波の波長、λ2;屈折波(又は透過波)の波長である。また、v1=fλ1およびv2=fλ2なので、上式は、

Ar=(v2-v1)/(v1+v2)A0

At=2v1/(v1+v2)A0

とも表記できる。ここで、v1;入射波および反射波の速さ、v2;屈折波(又は透過波)の速さ、f;振動数である。これらの式は、分母分子を屈折波(又は透過波)の速さv2で除すと、

Ar=(1-v1/v2)/(v1/v2+1)A0

At=2(v1/v2)/(1+v2/v2)A0

となるが、v1/v2は相対屈折n12なのでn12= v1/v2と置き換えると、これらの式は

Ar=(1- n12)/(1+ n12)A0…………………………………………B

At=2 n12/(1+ n12)A0…………………………………………C

とも表される。即ち、反射波や透過波の振幅は、入射波の存在する媒体から透過波が存在する媒体へ波が入る際の屈折率にみに依存する。
 波の強度は、角振動数の自乗と振幅の自乗と位相速度の大きさの積に比例するから、反射波の強度と屈折波(又は透過波)の強度の和が入射波の強度に等しくなるためには、

ω2A02sin(-ωt)2v1=ω2Ar2sin(-ωt)2v1+ω2At2sin(-ωt)2v2

が成り立たねばならない。即ち、両辺をω2sin(-ωt)2v2で除せば

A02n12=Ar2n12+At2…………………………………………D

でなくてはならない。BC式は、D式を満たすことは明らかである。
 BC式より、垂直入射の場合の振幅反射率Rと振幅透過率Tは、それぞれ、

R=
(1- n12)/(1+ n12)

T=2 n12/(1+ n12)


となる。相対屈折率n12>1の場合、即ち、絶対屈折率が小さい媒体から大きい媒体に向かって波が垂直入射する場合には振幅反射率Rは負になる。これは、反射波の位相が入射波の位相よりπだけずれ、屈折波(又は透過波)の振幅は入射波の振幅より大きくなることを意味する。相対屈折率n12<1の場合、即ち、絶対屈折率が大きい媒体から小さいい媒体に向かって波が垂直入射する場合には、反射波と入射波のは同位相であり、屈折波(又は透過波)の振幅は入射波の振幅より小さい。

 

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