温位の計算
熱の出入りが無くても気圧が変わると気温は変化します。気圧には著しい高度依存性が存在するため、気温にも著しい高度依存性が存在し、高度が異なる地点で観測された気温の値を直接比較しても、どちらの空気が本当に暖かいのか或いは冷たいのか判定できません。このため、高度が異なる場所で測定された気温を比較するためには、両方の空気を同じ気圧にする必要があります。
熱が出入りしない状態で(断熱的に)標準の気圧(=1000hPa)にした時に示す気温をθと表記し、温位と呼びます。位という漢字は、potential という学術用語に対して用いられる邦語です。即ち、温位は、現在ならば、ポテンシャル温度と表記されるであろう用語です。
気圧p(hPa)の場所で気温T(℃)が測定された時の温位θは

   θ= (T+273.15)×(1000/p)^0.2857

で求めることができます。単位はKです。0.2857という冪指数は、温位指数と呼ばれ、R/Cpで定まります。Rは乾燥空気の気体定数であり、Cpは乾燥空気の定圧比熱です。つまり、温位指数の値は、惑星大気の分子量と比熱によって定まっており、0.2857という値は現在の地球大気の組成の場合の数値です。
冬の天気解説で「輪島上空5000m(500hPa高度)にマイナス40℃の寒気」という表現がよく出てきますが、この条件で温位を求めてみると、

   θ= (-40+273.15)×(1000/500)^0.2857 = 284.21K = 11.06℃

となります。つまり、輪島上空5000m(500hPa高度)の-40℃の空気は、気圧約1000hPaの地上では気温11.06℃を示すことを意味しています。冬の輪島の平均気温は1℃程度ですから、輪島上空5000m(500hPa高度)の-40℃の空気は地上の空気より10℃以上暖かい空気であるということになります。

条件設定

現地気圧を指定して下さいhPa
現地気温を指定して下さい

計算結果の表示

        温位はKです
これを摂氏目盛で表すと℃です

計算条件を設定しなおして計算実行ボタンを押せば何度でも計算できます。

定義通りだと温位の単位はKですが、摂氏の単位(℃)で表現する文献もあります。


掲示者 中川清隆@立正大学地球環境科学部環境システム学科