第1回環境気象学コロキウム 予報士試験問題解説 平成25年4月17日 *

【問題】平成24年度第2回 気象予報士試験(学科,一般知識)

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【解答】
問1 正解  ④
問2 正解  ②


【解説】
 問1は、大気の成層構造に関する問題であり、頻出のテーマである。形式は文章の穴埋め問題であり、3箇所ある穴埋めの組合せとして正しい語群を5者択一するものである。
 勿論正確な知識があれば、頭からどんどん解答していけるが、択一問題には消去法を用いると効果的である。
 (a)(b)(c)ともに選択肢は2種類しかないので、選択肢の組合せは2×2×2=8通りしかありえない。このような場合、(a)(b)(c)どれか1つ絶対に正しいものか絶対に間違っているものを探すことが先決である。
 全くアイデアが無い状態で消去法を行う際には、最も多い選択肢の組を選ぶのが定石である。出題する側も、消去法の存在は意識しているので、この法則の逆手を打ってくることもあるので、絶対とは言い切れないが…。この伝で行くと、兎に角、白紙は絶対に避けるのが鉄則なので、まったく分からないときには(a)は成層圏と中間圏の境界、(b)は紫外線、(c)は光解離を選ぶ。すると⑤ということになる。
 成層区分の境界となる温度の極値が層の中間にあることはありえないので、(a)は成層圏と中間圏の境界ということになる。そうすると①と②は(a)の選択肢たりえず、③④⑤が残る。
 大気の鉛直構造を区分する際に、温度分布が基準となっていて、鉛直分布の形が変わる高度を境にして、下から、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏と区分されており、対流圏と成層圏の境は低温、成層圏と中間圏の境は高温、中間圏と熱圏の境は低温側の極値の場所である。問題文にある3つの高温域の内の中間の高度(a)にあるものは、この成層圏と中間圏の境であり、後の2つは、当然のことながら対流圏の下端と熱圏の上端である。
 (b)の選択肢は赤外線か紫外線しかないのだが、問題文からオゾンによって吸収されるのは赤外線と紫外線のどちらであるか、との形になっている。対流圏が生物にとって快適な生活空間になっているのは、先ず、適度な酸素と水と気温があり、生命の存在を脅かす宇宙線や紫外線が殆どないためであることを思い起こそう。宇宙線をカットしているのは地球磁場であり、紫外線をカットしているのはオゾン層である。(b)で選択されるべきは紫外線である。ここで、③が選択肢から除外され、残りは④と⑤だけとなる。
 (c)は、熱圏が高温な理由を聞いているのであるが、解離か電離しかないことになる。解離と電離はややこしいが、小倉義光「一般気象学」にもかかれているとおり、地球大気最上層で起こっているのが光電離であり、その下層で起こっているのが光解離である。空気粒子がバラバラになっているが、電荷を帯びているのが電離であり、帯びていないのが解離である。電離層が存在するのは100km以上の上層である。
 という訳で、電離が正しいということなので、⑤が排除され、結局④が正解となる。
 ④と⑤を残すまでは、多分、簡単に辿りつけると思う。電離と解離はややこしいので、最後はどちらかを選んで、1/2の確率に掛けるしかないかもしれない。その時、消去法の法則に従うと、選択肢の多い解離を選んでしまって⑤としてしまうが、消去法だけに頼るとこうゆうこともあり得る。

 問2は、霧層が形成されたことによる昇温量を答えさせる問題である。設問は1つのみで、選択肢はすべて異なっているので、組合せ問題の際のようなうまい手は無い。
 問題文の通りに熱収支式を作ってみて、温度変化量を地道に見積るほか無い。
 系の熱収支式は、

 系の熱容量×系の温度変化=系に正味流れ込んだ熱量+系の中で発生した熱量

と表せるので、この式の各項を見積る必要がある。
 まず、熱容量は、比熱×密度×体積でが、密度×体積=質量なので、
 底面積1m2、厚さ300mの霧の柱の熱容量=1000JK-1kg-1×300kg である。
 無風なので流れ込む熱量=0
 発生した熱量は、底面積1m2、厚さ300mの霧の柱に出現した水が凝結する際の潜熱だけである。降水の深さ0.03mm=0.03×10-3mだから、底面積1m2、厚さ300mの霧の柱に存在する水の体積=1m2×0.03×10-3m である。
 従って、水の質量=水の密度×水の体積=103kgm-3m2×1m2×0.03×10-3m であり、この水が凝結する際に発生した潜熱=2.5×106Jkg-1×103kgm-3m2×1m2×0.03×10-3m である。
 従って、系の温度変化=系の中で発生した熱量/系の熱容量
=2.5×106Jkg-1×103kgm-3m2×1m2×0.03×10-3m/(1000JK-1kg-1×300kg)
=2.5×106×0.03/(1000JK-1kg-1×300kg)
となる。
 この段階で、この答えの有効数字は25であることが明白になるので、②か④のどちらかが正解ということになる。
 上記の式の10のべき乗指数を整理すると=0.25K となる。
 よって②が正解


【吉﨑はこう考える】


【中川はこう考える】
 選択式問題において消去法によって正解を得るのは、試験対策としては有効であるが、学習としては邪道である。ちゃんとした知識に基づいて正解を得ることが出来る力の獲得を目指すの常道であることは勿論である。とはいっても、資格試験は、どうやって答えを出したかによって判定が異なる訳ではないので、選択式問題である限り、分からなくてもどれか必ず選んで解答することが極めて重要である。消去法による思考の訓練も充分やっておくのが良いと思う。
 中川の担当する気候変動論において、オゾン層の形成を扱っている。3つある高温域のうちの中間の高温域はオゾン層が存在しなければ出現しない。オゾン層は厚い酸素層の上端部で酸素が紫外線を吸収して生成されるので、地球に厚い酸素層が形成された4億年前からオゾン層が出現し、その下の酸素層下部(対流圏)が日射、酸素はあるが、紫外線は殆ど無い、地球生物にとって極めて生活しやすい場になったことを講義している。
 中川が担当する気象・気候学において、熱力学の第一法則を扱っている。熱力学の第一法則から、加熱された熱量=内部エネルギー増加量+された仕事量であることを思い出そう。系の温度変化は系の内部エネルギーの変化と比例しており、温度変化×熱容量=内部エネルギー変化であることも思い出そう。
 この問題の場合、加熱量=系の中で発生した潜熱量、された仕事量=0だから、加熱量=内部エネルギー増加量=温度変化×熱容量という図式が芋蔓式に出てくる。
 熱を出すのは水の相変化だが、温まるのは水蒸気や微水滴ではなくて乾燥空気だけ、と言うことに注意が必要。水蒸気や微水滴の温度が変化しない訳ではないが、水蒸気や微水滴の熱容量が極めて小さいため水蒸気や微水滴の加熱は無視できる。


【渡来はこう考える】


【重田はこう考える】


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