珊瑚漁発祥の地は地中海です。地中海では古代より珊瑚漁が行われていました。地中海で採取されたベニサンゴは、交易品として世界各地に運ばれ、それぞれの土地で装身具や祭祀具などに用いられました。現在でも世界各地で利用されており、産地から遙か遠く離れたチベットでも珍重されています。
宝石サンゴが日本にもたらされた時代は定かではありませんが、現存するものとしては正倉院に納められている珊瑚のビーズが最古の物です。これは、聖武天皇、光明皇后らが奈良東大寺の大仏開眼会(752年)で使用したとされる冠を飾っていたものと伝えられています。
明治時代になると日本で初めての珊瑚漁が高知県で始まりました。地中海産よりも大きく良質なものが取れることからヨーロッパで評判を呼び、高値で取引されました。やがて日本の珊瑚サンゴは、ヨーロッパを始めとして世界各地で利用されるようになりました。
(立正大学 岩崎望)
<文献>
●岩崎朱実・岩崎望編著, 珊瑚 宝石珊瑚をめぐる文化と歴史. 東海大学出版会, 2011年.
●秋道智彌, 2008. 珊瑚交易とチベット文化. 岩崎望編. 珊瑚の文化誌—宝石サンゴをめぐる科学・文化・歴史. 東海大学出版会, 181-196.
●荻慎一郎, 2008. 近代日本における珊瑚漁と黒潮圏. 岩崎望編. 珊瑚の文化誌—宝石サンゴをめぐる科学・文化・歴史. 東海大学出版会, 201-240.
●荻慎一郎, 2008. 近代における高知県の珊瑚漁と地域. 岩崎望編. 珊瑚の文化誌—宝石サンゴをめぐる科学・文化・歴史. 東海大学出版会, 241-300.
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