宝石サンゴを持続的に利用するために

 
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はじめに:宝石珊瑚とは
宝石サンゴの生物学
宝石サンゴの利用の歴史
宝石サンゴの種類と漁業
日本における分布
宝石サンゴの化学:骨軸の微量成分と生息場所
バイオミネラリゼーション
宝石サンゴの成長速度:鉛-210による推定
宝石サンゴ骨軸の構造
骨軸の化学分析から生息水温を推定する
宝石サンゴの系統分類
アカサンゴの成熟時期
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宝石サンゴを持続的に利用するために
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 宝石サンゴは宝飾品として利用されているだけでなく、宝物の象徴として絵画や物語に登場し、私たちの生活を豊かにしています。この宝石サンゴを持続的に漁獲するために以下のことを提案します。

1.選択的漁獲と休漁期間の設置またはローテーション漁業  奄美近海におけるアカサンゴ群体の年齢構成を調査した結果、操業後に少なくとも10−20年の休漁期間を置くことでアカンゴが漁獲サイズまで成長することが明らかになりました(図1)。資源の持続的な利用を図るためには、水中ロボットなど宝石サンゴを選んで採取できる方法で一定の大きさのものを漁獲すること、かつ操業後少なくとも10−20年間の休漁期間をおくことが必要です。または操業海域をいくつかの区画に分け、輪番で操業する方法も有効です。

2.宝石サンゴ資源を保全するためには、高密度に分布する海域や遺伝的多様性が高い海域を禁漁とすることが必要です。

3.幼生の加入を保証するためには、繁殖期間を禁漁にすることが必要です。高知県では2012年3月から、土佐湾の宝石サンゴの繁殖期間である6−7月が新たに禁漁期間となりました。  (立正大学 岩崎望)

<文献>
●Iwasaki. N., Fujita. T., Bavestrello. G. and Cattaneo-Vietti. R., 2012. Morphometry and population structure of non-harvested and harvested populations of the Japanese red coral (Paracorallium japonicum) off Amami Island. southern Japan. Marine and Freshwater Research, 51 (3). 372-382.

 

出現頻度グラフ  
図1 奄美近海におけるアカサンゴ操業海域と未操業海域及び漁獲物の年齢構成:漁獲されたサイズのピークは未漁獲海域のピークと一致し、そのサイズが漁獲されていないことを示している。一方、漁獲海域ではそのサイズが欠けており、若い群体が漁獲サイズまで成長するには少なくとも10−20年かかることを示している(R)。