高知県では、伝統的な網を用いた珊瑚漁が行われています。珊瑚網は石や鎖などの重りに粗い目の網を数枚とり付けたものです(図1)。石を重りにした場合は、1本のロープに3つぐらい珊瑚網をとりつけて海底を曳網します。鎖を重りにした場合は、桁と呼ばれる横棒に珊瑚網を複数とりつけて曳網します。
この珊瑚網が海底の環境にどの様な影響があるのかを調査しました。水深30-40mで鎖を用いた珊瑚網の挙動を観察した結果、網は広がることなく線状に曳網されることがわかりました(図2)。
また、水深10mで石を用いた珊瑚網を曳網したところ、目視観察では8日後に曳網跡はなくなっていました。この曳網では海底の砂泥中に生息する小型底生生物を計数し、曳網による生物への影響を調べました。その結果、優占種であるソコミジンコ類は、海底の表面から1cmまでの層において曳網直後と曳網1日後に個体数が減少しましたが、曳網14日後に個体数が回復しました。一方、線虫類は曳網14日後にも3cm以深では曳網の影響が残りますが、海底表層では回復が見られることが明らかになりました。 (立正大学 岩崎望) |