アカサンゴは、宝石サンゴのなかまです。アカサンゴは水深100 m以上の深海に棲息しているため、その生態に関する詳細はほとんどわかっていません。特にからだのどこに生殖器官が発達し、いつ繁殖するのかについては未解明の部分が多々あります。
アカサンゴは、多数の個虫からなる群体です。骨軸を取り囲んでいる薄い膜のような層が実際に生きているサンゴ組織です。サンゴ組織には2種類の個虫があります。1つは触手をもっている個虫で、こぶのように隆起しているため、すぐに見分けがつきます(図1)。もう1つは触手をもたない個虫ですが、小さくて膨らんでいないので見つけにくいです。サンゴ組織は多数の小さな骨片を身にまとっていますので、サンゴ組織の内部は骨片がじゃまになって観察することがむつかしいです。
骨片と骨軸は、化学処理をすることで溶かし去ることができます。それにより、骨片にさえぎられずにサンゴ組織の内部を観察することができました。
アカサンゴを化学処理しサンゴ組織をたんねんに観察すると、ある群体には卵(図2)ができ、別の群体には精子嚢(図3)ができていることがわかりました。
卵と精子嚢は別々の群体にでき、両方が同じ群体にできることがなかったので、アカサンゴは雌雄異体であるといえます。
サンゴ組織の切片を作り、卵と精子嚢の断面の様子も観察しました。その結果、卵も精子嚢も触手をもたない個虫の中で発達することがわかりました。
土佐湾沖で2年間かけて毎月少なくとも1回アカサンゴを採集してきました。卵または精子嚢をもっているアカサンゴの多くは4月5月6月に採集されました。7月下旬以降の夏の期間には卵や精子嚢をもっているアカサンゴはほとんどいませんでした。このことから、土佐湾沖のアカサンゴは春から初夏にかけて成熟し、夏に一斉に放卵放精していることが推察されます。 (高知大学 奥田一雄)
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